不倫映画に一家言

不倫を扱った映画には一家言を持っています。当事者が最初からその気満々で、如何にもといった設定や展開には鼻白んでしまうのです。周囲の関係者ら(配偶者さえも)が、必要以上に気を廻して”けしかける”状況もご都合主義でしらけます。自分勝手を実行しているくせに悲劇の主人公を気取って、センチに思い悩み悶々とする風情にもげんなりします。

私が「不倫もの」として認める条件は、恋に落ちる必然性に納得し、共感できるかどうか、その説得力を感じられるかどうかです。さらに、めいっぱい気持ちを抑え込んで耐える、健気な姿勢が伝わるかどうかが重要です。道ならぬ恋には謙虚な自制心があるべきで、いとも簡単に見つめ合ったり誘ったりの安っぽい恋愛ごっこには、「不倫」と冠する価値はありません。

私が認める不倫映画を挙げると、以下の作品が妥当な線ですが、イチ押しはこれです。

「ドクトル・ジバゴ」(65年英米伊)デヴィッド・リーン監督

ロシア革命を背景に、激動の時代に翻弄される男女を描いた大河ロマンの傑作です。

主役のジバゴとヒロインのラーラは、互いにパートナーのいる身で惹かれ合いますが、触れ合うこともなく大人の分別で元の場所に帰っていきます。しかし不穏な社会情勢下で、2人は運命の糸に導かれるように再会して出奔し、そのあと永遠に引き裂かれることになるのです。ドラマティックな展開と凍える大地の情景が脳裏に焼き付き、テーマ曲が瞼を熱くする珠玉作でした。
本作は私のようなご意見番の映画ファンを唸らせ、崇高な余韻と感銘を与えてくれた名作中の名作だと思います。

その他、好きな作品を並べるとこんなラインナップです。

「逢いびき」(45年英)デヴィッド・リーン監督

不倫相手との別れを経て戻ってきた妻に夫が言います「長い旅をしてきたんだね」。夫の存在が初めてクローズアップされ、ホッと胸をなでおろす結末です。

「めぐり逢い」(57年米)レオ・マッケリー監督

身辺整理をしてから再会を、という誠実で強固な意志を通して成就する大人の恋愛模様。悪人が出ない映画の心地よさを実感できます。

「恋におちて」(84年米)ウール・クロスバード監督

ニュージーランド行きハネムーンの飛行機内で上映された、意外や意外な掘り出し物。恋慕が募る過程、抑えても溢れ出る思慕、嬉しくて泣けるラストシーン、すべて完璧です。

「ある日どこかで」(80年米)ヤノット・シュワルツ監督

スーパーマン俳優クリストファー・リーヴ主演の時を超えた悲恋物語。もうひとひねり、ちょこっと何かがあってもよかったような気がします。

「月の輝く夜に」(87年米)ノーマン・ジュイソン監督

カリスマ的存在の歌手シェールとまだ若造だったニコラス・ケイジ主演。それぞれの魅力が存分に発揮されたロマンチックコメディの佳作です。共演のベテラン女優オリンピア・デュカキスが秀逸で、女心の機微にクラクラします。
最初は化粧っ気もなく、ぼさぼさ髪のシェールが、ここ一番のデートで見事にキレッキレのいい女に変身します。もちろんこっちがシェールの真骨頂ですが、グレードアップしていく様子は必見です。

少し逸れますが、シェールが難病の息子の母を演じた「マスク」は、感動的なヒューマンドラマでした。派手で奔放なイメージはそのままに、息子を深く愛する気丈な母親像に涙腺が緩みました。

また、「恋する人魚たち」の取っ散らかった雰囲気もシェールらしさ全開で悪くありませんでしたが、ストーリーそのものがちょっと引いてしまうトーンです。

「月の輝く夜に」はイタリア系ファミリーのお話らしく、しょうもないヘタレな体たらくや笑っちゃうような滑稽さがテンポよく、群像劇の要素を交えて展開します。
結局はうまいこと丸く収まる調子の良さも、全部まるごと許せちゃう大団円の趣で、とても満足感のあるハッピーエンドに仕上がっています。

以上、ぜひ味わってほしい不倫映画をざらっと並べました。
次回は帰省中に弟と観た、映画やテレビ番組について書きたいと思います。

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