コーヒーをこぼしてよかった【エッセイ】
大阪駅から電車に乗り、初めは空席がなかったが何駅か越えてから人が減って席が空いた。
空いた席の窓側に座ろうとし、その隣に別の男性が座ろうとした瞬間
『うわ!なんだこれ!』
驚いて男性の方を見ると、男性が座ろうした通路側の席の下がコーヒーの水溜りができていた。
元々誰かが床に置いていたコーヒーを気づかずに蹴ってしまったようだ。
そりゃそうだ。電車内で床にコーヒーが置いてある状況は珍しい。
実を言うと乗った時から誰かコーヒーを置き忘れたなと思っていたが、自分がその座席に座るときにはそのことを完全に忘れていた。
僕が気をつけていれば未然防止できたので、少し隣の男性に申し訳なくなった。
男性は沢山ポケットティッシュを持っていた。
一方で僕は液体を拭けるような物は持っていなかった。
かと言って何もしないのも気が気でなくて一瞬あたふたする。
『すいません、一緒に拭いてもらってもいいですか。』と隣の男性はポケットティッシュを差し出して僕に頼んできた。
『もちろんです!』と答え、僕たちはなんとか溢れたコーヒーを拭き取った。
するとその様子を見た全く関係ない女性が、使ったティッシュを捨てるナイロン袋を僕に差し出してくれた。
これでコーヒーを吸いまくったティッシュを、拾って捨てることができる。
さらに、隣の男性に『ありがとうございます。これもらったんでよかったら使ってください』と言われ、ウェットティッシュを頂いた。
おそらく僕にナイロン袋をくれた女性とは別の人がくれたのだろう。
これで手を綺麗にすることができる。
こぼしたコーヒーの拭き掃除なんて、したくなかった。
誰かが置き忘れたコーヒーを、なんで僕が拭かなきゃいかんのだ。
でも、不思議とそんなことは思わなかった。
僕は人の優しさに助けてもらい、この出来事を良かったと思えているくらい幸せな気持ちになれた。
人を助けるって、こんなに人を幸せにできるんだ。
次は僕も、今日助けてくれた人達のように、困っている誰かを助けたい。
まずはポケットティッシュくらいは、常備しておこうと思う。
