行き先をなくした午後、青い街角で猫に囲まれる。
この文章は世界の街を切り取った旅エッセイです。
題して「見知らぬ異国で、ひとりごつ」
バスとフェリーを乗り継ぎ、アフリカ大陸のモロッコへと渡った。今後のことは、そこで考えよう。
シャウエンは、街全体が深く鮮やかな青で、まるで絵本の世界だという。
街に到着すると、ひんやりとした空気が肌を包んだ。狭い路地がくねくねと続き、まるで迷路のような空間に、心はウキウキと高鳴る。こういう道を、ただフラフラと歩くのが好きなのだ。朝晩は冷え込み、暗くなると迷って宿に戻れなくなりそうだ。
その日の夕食は、モロッコ名物のタジン鍋。
スパイスの効いた熱々のスープが、疲れた体にじんわりと染み渡る。一口食べると、クミンとコリアンダーの香りがフワッと鼻に抜け、「ああ、アラブに来たぞ!」という味が、わたしを満たした。
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翌日、明るい日差しの下、再び路地巡りへと繰り出すと、石畳のあちこちに、猫猫猫がいるではないか!
まるで、街の守り神のように、猫たちは自由でのんびり。人間に臆することなく、道端でゴロゴロとくつろいでいる。いろんな柄の猫たちが、絵本のような青い街に彩りを添えている。夢中になってカメラをパシャパシャと鳴らし、彼らの姿を収めた。
路地を歩いていると、小さな工房から、カーン、カーンという金属音が聞こえてきた。覗き込むと、エプロンをつけたおじさんが、真剣な眼差しで、ハンマーをトントンと打ちつけて、何か複雑な模様の金属細工を作っている。
かまってほしそうな猫が手元をじゃまするが、おじさんは集中していて全く気付かないみたいだ。真剣な姿に見とれて、わたしはしばらくその場を動けなかった。
ここは宿も安く、ご飯もうまく、そして何より猫たちが愛らしい。
次の旅路のことなど、すっかり頭から消え去っていた。わたしは、シャウエンの青い街と、そこで出会った温かいものたちにどっぷりと浸り、気がつけば三週間も滞在してしまっていた。
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―ああ、またひとつ、見知らぬ異国で、ひとりごつ。
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