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りんごの、街。カザフスタン、アルマトイ。

この文章は世界の街を切り取った旅エッセイです。
題して「見知らぬ異国で、ひとりごつ」


アルマトイに着くまで、りんごをわかったつもりでいた。

カザフスタン、アルマトイ。
「アルマトイ」とは、「りんごの父」という意味。
りんごの、産地。

バザールに、行く。
りんごが、山積みになっていた。
赤いりんご。
緑のりんご。
黄色いりんご。
どれも、大きい。
ひとつ、買ってかじる。
シャリッ。
甘い。
みずみずしい。

レストランに、入る。
「りんごと鶏肉の煮込み」
注文した。
運ばれてきたのは、シチューのような料理。
鶏肉が、ごろごろ入っている。
そして、りんごの塊も、入っている。
スプーンですくって、ひと口。
りんごが、とろける。
煮込まれて、甘くなっている。
鶏肉の旨味と、りんごの甘み。
不思議な組み合わせだ。
だが、うまい。
もう一口。
また一口。
鶏肉は、ほぐれるように柔らかい。
りんごは、やさしい甘さをふくんでいる。
スパイスがふっと立ちのぼる。
シナモンだろうか。
ひと皿の中で、すべての香りと食感が静かに寄り添っていた。

気づけば、皿は空になっていた。
心の奥に、ふわりとあたたかい余韻だけが残る。

りんごの街、アルマトイ。
バザールにも、りんご。
料理にも、りんご。
どこへ行っても、りんご、りんご、りんご。

それでも不思議と飽きなかった。
それぞれに違う顔があり、味わうたびに小さな驚きがあった。

あと少しで、帰国する。
だが、このりんごの味は、忘れない。

―ああ、またひとつ、見知らぬ異国で、ひとりごつ。


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