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ひび割れた日々、トラとザリガニ。

この文章は世界の街を切り取った旅エッセイです。
題して「見知らぬ異国で、ひとりごつ」


乗っていたバスが猛スピードで走る中、ブリブリブリ、ともうこの旅でなんどめかの腹の底からこみ上げる強烈な痛みを感じた。運転手に必死に身振り手振りで訴え、バスを止めてもらう。足早に茂みの中へ駆け込むと、道はあっけなく見失われ、気がつくと、熱気をはらんだジャングルの奥深く、見知らぬ場所に立っていた。

背筋にひやりとしたものが走る。まさか、ヒグマ?トラ?
息をひそめていると、そこから現れたのは、小さな子どもを連れた地元の女性だった。彼女はくすくすと笑い、わたしの緊張を解きほぐしてくれた。そんなユーモラスな出会いから始まった、トバ湖への旅。かつて巨大な火山の噴火でできたこの湖は、世界でもっとも深いカルデラ湖として知られている。

湖の中央に浮かぶサモシール島へ向かう船の上。エメラルドグリーンの水面をただ、ぼんやりと眺める。水は信じられないくらい静かで、遠くに連なる山々の稜線が、鏡みたいにくっきりと映っている。

2004年、インド洋で起きたスマトラ島沖地震。当時、この湖の周囲にも激しい揺れが襲ったと聞いた。

湖畔に並ぶ、色とりどりの伝統的な家屋は、穏やかな暮らしを語っている。でも、その足元をよく見ると、コンクリートの基礎に、ひび割れた跡が残っている。あの日の揺れの記憶が、まるで血管みたいに、地面に刻まれている。

そっとそのひび割れに触れてみた。ざらりとした感触が、指先に伝わる。それは、人々の恐怖や悲しみ、そして、それでもなお、この土地で生きていくんだという、静かで強い意志の証なのだろう。

宿にもどると、今日の夕食は、トバ湖でとれたザリガニだと教えてくれた。炭火で焼かれたザリガニは、ぷりぷりと弾力があり、香ばしい匂いが食欲をそそる。口に入れると、濃厚な甘みが広がり、日本のものとはまた違う、力強い味わいだ。

横にいた老人が、にこっと笑い、片言で「おいしいだろう?」と話しかけてくれた。彼の目は、この湖みたいに、深く、澄んでいた。ただ、うなずくことしかできなかった。

この静かな湖が、過去の悲しみをそっと包み込み、そして、やがて来る未来へと、静かに時を運んでいく。この湖の底には、たくさんの声が眠っている。それでも、人々はこうして笑い、この湖が育んだ命を、おいしいと喜ぶ。その光景を、ただ、じっと見つめていた。

後日、ブキティンギ。
観光客も少ない動物園の、その一角で、まぎれもなく本物のスマトラタイガーと向き合った。檻の向こうから、ごうっという低い唸り声が聞こえてくる。鋭い爪を立てて歩く、そのしなやかな筋肉の動きが、妙に生々しい。その威厳に満ちた姿は、ジャングルで感じた、あのひやりとした感覚を再び呼び起こす。

こんなにも強く、そして美しい生き物が、あの熱気をはらんだジャングルを生き抜いている。

旅の始まりに抱いた、漠然とした期待と不安。
それは、この動物園で見た、力強い命の輝きによって、ひとつの形を得た。そして、この土地のどこかに、あの日の記憶を残すひびがあるように、わたしの旅にも、忘れられない爪跡が、たしかに刻まれたのだった。

―ああ、またひとつ、見知らぬ異国で、ひとりごつ。

Google Geminiと相談しながら創作しました。
小学生の作文のようなひどい文章を旅先の街の空気感が伝わるように変更してもらいました。カバーイラストも「宮崎駿」風のアニメイラストでお願いしました。


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