6718本のパイプ。ラトビア、リガ大聖堂。
この文章は世界の街を切り取った旅エッセイです。
題して「見知らぬ異国で、ひとりごつ」
リガ大聖堂に着くまで、パイプオルガンをわかったつもりでいた。
リガ旧市街。
石畳の道を歩いて、大聖堂へ。
十三世紀の建物だという。
古い。
中に、入る。
天井が、高い。
アーチが、美しい。
ステンドグラスから、光が差し込んでいる。
柱も、壁も、装飾が施されている。
前方に、パイプオルガンがあった。
巨大だった。
パイプが、ずらりと並んでいる。
金色のパイプ。
銀色のパイプ。
大きいものから、小さいものまで。
何千本。
六千七百十八本だという。
十九世紀に作られた。
オルガン奏者が、座った。
鍵盤に、手を置いた。
そして、音が鳴った。
低い音。
ゴオオオオオ。
聖堂全体が、震えるような音。
次に、高い音。
ピーーーー。
透き通った音。
音が、重なる。
低音と、高音。
中音も、加わる。
複雑な和音。
音が、天井に響く。
壁に反響する。
空気が、わずかに震えている。
圧倒的だった。
六千七百十八本のパイプが、息を合わせるように鳴る。
音が混ざり合い、聖堂の隅々まで広がっていく。
目を閉じた。
音の波が、ゆっくりと身体を包みこむ。
ただ、そのなかに身を置いていた。
それだけで、十分だった。
演奏が、終わった。
拍手。
オルガン奏者が、立ち上がって、礼をした。
聖堂を、出る。
外は、明るかった。
旧市街の石畳が、陽射しに照らされている。
まだ、耳に残っている。
あのオルガンの音。
ゴオオオオオという低音。
ピーーーーという高音。
数千本のパイプが奏でる、音。
―ああ、またひとつ、見知らぬ異国で、ひとりごつ。
いいなと思ったら応援しよう!
よろしければ応援お願いします! いただいたチップはクリエイターとしての活動費に使わせていただきます!