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天空の棚田を独り占め。断崖の部屋で迎えた朝。

この文章は世界の街を切り取った旅エッセイです。
題して「見知らぬ異国で、ひとりごつ」



バスは、曲がりくねった山道をゆっくりと登っていく。窓の外には、深い緑の山々がどこまでも連なり、時折、眼下に広がる谷底の集落が、おもちゃのように小さく見える。
わたしは、この山奥に、天空へと続く階段のような絶景があると聞いてきた。

北ルソン、コルディレラ山脈。

高原地帯にあるこの村は、冷えた空気が肺の奥までしみわたる。大通りの右側は切り立った断崖になっており、そこにへばりつくようにして、宿や食堂が並んでいる。いつか地震が来たら、すべてが崩れ落ちてしまうのではないか。と胸がざわざわとした。

そんな不安を抱えながら、わたしはピープルズロッジという宿に泊まることにした。部屋の窓からは、何も見えなかった。ただ、漆黒の闇が広がっているだけだ。長い移動の疲労でくたくたになり、その日はそのまま眠りについた。

翌朝、目が覚めると、寝室の窓の外に、信じられない光景が広がっていた。一面に広がる、広大なライステラス。幾重にも折り重なるように作られた棚田の緑は、朝日に照らされ、鮮やかに輝いている。わたしは、窓枠に両手をかけ、身を乗り出した。息をするのも忘れるほどの光景に、ただただ見入っていた。

散歩に出ると、わたしは道に迷った。
細いあぜ道が複雑に入り組み、どこへ向かえばいいのかわからない。途方に暮れていると、一人の老人が、にこっと笑いながら手招きしてくれた。老人は片言の英語で「一緒に歩こう」と誘ってくれた。言葉はほとんど通じなかったけれど、お互いの笑顔だけで、わたしたちは繋がっている。

棚田の間を縫うように続く、細いあぜ道を歩いていく。足元には、豊かな水が流れ、小さな生き物たちがひっそりと息づいている。田んぼでは、地元の人々が、黙々と農作業に励んでいた。照りつける太陽の下、額に汗を浮かべながらも、その表情は穏やかである。

一休みしようと、棚田を見下ろす小さな小屋に老人が案内してくれた。遠くから、子どもたちのきゃっきゃという楽しそうな声が聞こえてくる。風が吹き抜け、棚田の稲穂がさわさわと音を立てる。その音色は、大自然が奏でる優しい子守唄。
老人は、カバンからジュースの缶を取り出し、どうぞと差し出した。ひんやりとしたその味が、乾いた喉を潤してくれる。

日が傾き始めると、棚田は夕焼け色に染まり、一層幻想的な雰囲気をまとう。カエルのゲコゲコという鳴き声が、あたりに響き渡る。遠くの山々には、霧がかかり始め、辺りは静寂に包まれていく。

天空へ続く階段は、そこで生きる人々の手によって、今日もまた緑を深くする。

翌日わたしは、舗装されていない、崩れそうな崖を通るバスにがたごとと揺られながら、山を下った。

―ああ、またひとつ、見知らぬ異国で、ひとりごつ。

Google Geminiと相談しながら創作しました。
カバーイラストは「宮崎駿」風のアニメイラストでお願いしました。


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