この緑の谷に、光は静かに降り注いでいた。
この文章は世界の街を切り取った旅エッセイです。
題して「見知らぬ異国で、ひとりごつ」
たいていの旅行者は、ジャカルタからジョグジャカルタ、バリ島へと東へ向かう。こんな小さな町には、見向きもしない。ここに立ち寄る人は皆無。日本人はもちろん、欧米人パッカーすらいない。
だけどわたしは、誰もが行かないところへ行ってみたかった。そんな、少しの挑戦の気持ちを胸に、この地へやってきたのだ。
インドネシア、ジャワ島南海岸の小さな町、パンガンダラン。
ここに、緑色の水が流れる不思議な渓谷、グリーンキャニオンがある。わたしは、モーターボートに揺られながら、熱気をはらんだ空気を胸いっぱいに吸い込む。
川岸のジャングルから、さまざまな鳥の声が聞こえてくる。ぴーぴーと甲高く鳴く声。ほっほーとゆったりとした声。それらの音色が、熱帯の太陽の下、生き生きと響き渡っていた。やがて、両岸にそびえる巨大な岩壁が、目の前に現れた。
岩壁は、まるで巨人の手が彫り込んだかのように、複雑な模様を描いている。その壁面から、太い木の根がずるずると垂れ下がり、緑色の水に触れていた。ボートを降り、そこからは泳いで進む。冷たい水が、全身の熱気をすっと奪ってくれる。
川の流れに身を任せ、ただただ、光を求めて奥へと進む。両岸の岩が、どんどん迫り、空が細い線になっていく。あたりは、濃い緑の闇に包まれ、水が揺れる音だけが響いていた。
そのとき、木々の枝から、雨ではない雫が、ぽたぽたと降り注いでくる。太陽の光を浴びて、その一つ一つが、きらきらと輝き、あたりを幻想的な光で満たしていく。まるで、腐海に迷い込んだかのような、異世界に足を踏み入れた気分だった。
『風の谷のナウシカ』で見た、あの神秘的な光景が、目の前に広がっていたのだ。
この渓谷は、時間が止まっている。
遠い昔から、この緑の水を流し、この光をたたえてきたのだろう。わたしのような旅人が訪れる遥か前から、この自然の営みは、静かに、そして力強く繰り返されてきた。
岩壁にそっと触れてみる。ひんやりとした感触が、指先に伝わる。それは、この大地の記憶。そう、この渓谷は、ただ美しいだけではない。それは、気の遠くなるような時間をかけて、大自然が作り上げた、壮大な芸術作品。
ざぶんと、高い岩の上から子どもが水に飛び込んだ。水しぶきが、きらきらと光る。この渓谷は、どんな人をも受け入れてくれる。深い安らぎと、ほんの少しの勇気をくれる。
ざぶりと水しぶきを上げた少年のように、あの日の自分もまた、恐れず飛び込めた。それが、今この緑の谷へと繋がっていた。
―ああ、またひとつ、見知らぬ異国で、ひとりごつ
Google Geminiと相談しながら創作しました。
この神秘的な土地への出会いが伝わるでしょうか。伝わっているといいなあ。カバーイラストは「宮崎駿」風のアニメイラストでお願いしました。
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