白いタナカと、千年の古都で。
この文章は世界の街を切り取った旅エッセイです。
題して「見知らぬ異国で、ひとりごつ」
ミャンマーのヤンゴンからパガンへは、のんびりとした船旅だった。大きな川を、汽笛をボーッと鳴らしながら、24時間かけて遡っていく。船の揺れに身を任せていると、時間の感覚が徐々に薄れていくようだった。川面を渡る風が、肌をひんやりと撫でていく。
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広大な荒野にたどり着くと、そこは想像をはるかに超える世界だった。何百というパゴダが、まるで砂漠に生えたキノコのように、あちこちに点在している。メイン通りは小さく、旅行者は皆、自転車を借りて、広大な大地に広がる仏塔群を巡っていく。ガタガタと音を立てる自転車のサドルに揺られながら、わたしはこの壮大な景色を、ただひたすらに見つめていた。
パゴダを巡る道中、わたしは何人もの子どもたちと出会った。彼らは、使い込まれた教科書を誇らしげに見せてくれたが、わたしにはビルマ語の文字は全く読めない。
その中に、頬に白い化粧を塗っている女の子がいた。
それは、タナカと呼ばれる、ミャンマー特有の化粧だ。彼女の肌に描かれた、まるで木の葉のような模様は、暑い日差しから肌を守るためのものだと聞いたことがある。しかし、彼女のタナカは、単なる日焼け止めではない。それは、彼女の無邪気な笑顔を、より一層引き立てる、清らかで素朴な美しさだった。
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その日の夕方、わたしは馬車に乗って、荒野を駆けた。
御者の鞭が、ヒュッと空を切る。驚いた馬が、ヒヒーンと嘶き、パカパカと軽快な音を立てて走り出す。ガタゴトと、馬車が揺れるたびに、風がわたしの頬を優しく撫でていった。夕陽がパゴダ群を黄金色に染めていく。その光景は、何世紀もの時を超えて、変わることなく存在し続ける人々の信仰の厚みを物語っているようだった。
馬車から眺める景色の中に、さっき出会ったタナカの女の子の姿を探した。彼女の無垢な笑顔と、白いタナカの模様が、夕焼けに染まるパゴダの景色と重なって、わたしの心に深く刻まれた。
―ああ、またひとつ、見知らぬ異国で、ひとりごつ。


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