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マルシェの彩り、心のぬくもり。

この文章は世界の街を切り取った旅エッセイです。
題して「見知らぬ異国で、ひとりごつ」


イタリアのミラノでのまさかの出来事の後、わたしは急いでフランスへと向かった。目指すは、南海岸のニース。niceと書いてニースと読む、安堵の風が胸に吹き込むようだ。
バックパッカーにとってはオフシーズンで一泊10€で泊まれる安宿があると聞き訪れたのに、実際は普通の50€。旅の情報って、当てにならないな。

宿で荷物を整理した後、わたしは街を散策した。さすがリゾート地、展望台から見る海岸線は、息をのむほどに美しい。青い海がキラキラと輝き、遠くの水平線までずーっと続いている。
が一人では寂しいし、手荷物の心配もあるので、海には入らない。ただ、その美しい景色に、心の中で、シャッター音が静かに響いた。

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翌朝、わたしは毎日開催されているというマルシェへと向かう。
道路の両脇には、カラフルな花、つやつやの果物、シャキシャキの野菜、新鮮な魚、様々な種類のチーズ、そしてハム。食料品を中心に、ありとあらゆるものがずらりと並んでいる。まるで、築地市場がそのままおしゃれになったような雰囲気。アジアの雑多な市場とは違い、商品はどれも整然と並べられ、美しくディスプレイされている。散策そのものが軽快なメロディになっていた。

屋台もあり、その場で食べられる軽食も売っていた。わたしは、焼きたてのクレープをパクリ。ふわふわの生地と、甘い香りが口いっぱいに広がり、心がほどけ、笑みがこぼれていた。

クレープを片手に、ふと足元を見ると、一匹の猫がすりすりと足にまとわりついてきた。
真っ白な毛並みが、この街の青と白の景色によく似合う。小さな声で「ニャー」と鳴きながら、上目遣いでクレープを見上げる姿が、あまりにも可愛らしくて、少しだけ分けてあげた。ペロッと舌を出して食べる姿を見ていると、ミラノでの沈んでいた感情が、光に溶けてゆくように消えた。

このマルシェは、ただの市場ではない。
それは、ニースという街の息吹を肌で感じさせてくれる、彩り豊かな場所。そして、旅の途中で出会った小さな命との触れ合いが、わたしの心に温かい光を灯してくれた。

―ああ、またひとつ、見知らぬ異国で、ひとりごつ。


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