ひとなつこい猿と、警戒心むき出しの犬。9時間と5カ月。
この文章は世界の街を切り取った旅エッセイです。
題して「見知らぬ異国で、ひとりごつ」
宿にもどると、一人の女の子に会った。
日本から来たという彼女に「ウブドまで何時間かかりましたか?」と聞かれたので「5カ月くらいかな」と答えると、彼女はきょとんとした顔で「え、わたし飛行機で9時間でしたよ?」と笑った。
ああ、そうか。彼女にとっての旅は、飛行機でひとっとびだけれど、わたしにとっての旅は、途方もなく長い時間と、たくさんの出来事が詰まっている。
インドネシア、バリ島ウブド。
緑豊かな棚田が広がり、穏やかな空気が流れる、多くの旅人が憧れる場所。
昼間、賑やかな市場の喧騒に紛れるように、きゃんきゃんと小さな吠え声が聞こえる。そして夜、人気のない道を歩いていると、暗闇の中から低い唸り声が聞こえ、心臓が跳ね上がる。
ウブドの街には、本当にたくさんの犬がいる。繋がれている犬もいるけれど、多くは野良犬だ。痩せて毛並みの悪い犬、のんびりと日向ぼっこをしている犬、群れをなして歩いている犬。その姿は様々だが、共通しているのは、警戒心をむき出しにしたような、鋭い眼光だ。
一度、夕暮れ時に細い道を歩いていたときのこと。突然、数匹の犬が低い声で唸りながら、わたしを取り囲んだ。牙をむき出し、喉を鳴らすその姿に、恐怖で足がすくむ。動けないわたしを、犬たちはじりじりと間合いを詰めながら見つめている。
なんとか、近くの店の明かりに助けを求め、その場を逃れることができたけれど、心臓はしばらくドキドキと高鳴ったままだった。美しい自然と、人々の穏やかな笑顔の裏側で、犬たちは何を思い、吠えているのだろうか。
もしかしたら、彼らもまた、この土地で生きるための不安や、満たされない何かを抱えているのかもしれない。観光客であふれかえるこの村で、彼らはどんな毎日を送っているのだろう。
道端で、一匹の犬が寂しそうに丸まっているのを見かけた。
その瞳には、諦めのような、悲しみのような光が宿っているように見えた。近づきたいけれど、あの時の恐怖が蘇り、足を止めて見ていることしかできない。
一方で、モンキーフォレストにいる猿たちは、なかなかの曲者だ。
観光客の油断を見計らっては、バッグから食べ物をさっと盗み去る。その手際の良さと、盗んだ後のきゃっきゃという得意げな鳴き声には、どこか憎めない茶目っ気がある。犬たちの鋭い警戒心とは、まるで違う。
ウブドの夜は、ひんやりとした空気に包まれて、静かに更けていく。
椰子の葉が風にかさかさと音を立て、耳をすますと、遠くから虫の声が、りーんりーんと聞こえてくる。その声は、この楽園の、もう一つの顔を教えてくれているようだった。
―ああ、またひとつ、見知らぬ異国で、ひとりごつ。
Google Geminiと相談しながら創作しました。
説明的だった冒頭を出会いからはじめて興味をひくよう構成し直してもらいました。カバーイラストは「宮崎駿」風のアニメイラストでお願いしました。
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