パルテノン神殿よりも、ピタに心躍る。
この文章は世界の街を切り取った旅エッセイです。
題して「見知らぬ異国で、ひとりごつ」
トルコから夜行バスに乗り、ギリシャのアテネに降り立った。
バスの扉が開くと、外の空気がふわっと肌をなでる。それまで見てきたアジアの人々とは明らかに違う、肌の色は濃く、彫りの深い顔つきの人々。まるで古代の屈強な戦士が現代によみがえったかのようだ。それにしても、Greeceという国を「ギリシャ」と翻訳したのは、一体誰なのだろうか。
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アテネでの目的地は、やはりパルテノン神殿。
丘の上にそびえ立つ、その荘厳な姿を前に、わたしは立ちつくす。確かに美しい。だが、有名すぎて写真で見た想像通りのものがそこにあるだけで、なぜだか、心は少しも動かなかった。ただただデカい。それだけだ。
旅が長くなると、感情が焼きついて、何をみてもなにも感じなくなる「不感症」に陥ってしまう。この症状は誰にでもおとずれるもので、日本に帰国しない限りは治ることがない。旅のモチベーションが著しく低下するのでよくないない状態だ。
さらに、これまでのアジアと比べると、ヨーロッパは物価が高い。
アジアでは一泊300円から500円という宿に泊まっていたのに、ヨーロッパでは下手すると10倍もする。長くひとつの場所に滞在することは難しい。
そんなわたしを救ってくれたのが、街中で見かけたピタだった。
平たいパンに、肉や野菜がたっぷり挟まれて、たったの1~2ユーロ。もっちりとしたパンの香りがふわ〜っと鼻腔をくすぐる。一口食べると、ふっくらとしたパンの食感に、じゅわっと広がる肉汁と野菜の甘み。旅で疲れた体に染み渡るようだった。
しかもメニューが豊富で選択肢が多い。
ピタは、わたしにとって単なる食事ではなかった。それは、高価なものばかりのヨーロッパの旅で、安価で、温かく、わたしの心をホッとさせてくれる、大切な存在だった。
―ああ、またひとつ、見知らぬ異国で、ひとりごつ。
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