若者がいない。ブルガリア、地方都市。
この文章は世界の街を切り取った旅エッセイです。
題して「見知らぬ異国で、ひとりごつ」
ソフィアから、バスで地方都市へ向かう。
窓の外は、のどかな田園風景。
着いた町は、静かだった。
静かすぎた。
若者が、いない。
歩いているのは、老人ばかり。
カフェに座っているのも、老人。
商店で買い物をしているのも、老人。
活気が、ない。
店は、開いている。
だが、客がいない。
道を歩く人も、少ない。
まるで、死んだような町だった。
カフェに入った。
老人たちが、タバコを吸っていた。
もくもくと、煙が立ち上っている。
喫煙率が、高い。先進国で断トツ1位。
ブルガリアの人口は、減り続けている。
一九八七年、八百九十六万人だった。
それが、二〇二四年には、六百七十万人。
二百二十万人以上、減った。
世界で最も速い、人口減少。
二〇五〇年までに、さらに二百万人減るという。
低い出生率。高齢化。若者の移住。
若者は、この国を出ていく。
仕事を求めて。未来を求めて。
残るのは、老人ばかり。
そして、静かな町。
カフェを出た。
老人が、タバコを吸いながら、ぼんやりと座っている。
子どもの声が、聞こえない。
若者の姿が、見えない。
ふと、思う。
未来の日本も、こうなるのかもしれない。
日本も、人口が減っている。
少子高齢化。地方の過疎化。
ブルガリアほどでは、まだない。
だが、このままいけば…
静かで、死んだような町。
老人と、タバコの煙。
それが、ブルガリアの地方だった。
―ああ、またひとつ、見知らぬ異国で、ひとりごつ。
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