逆さまの木。マダガスカル、バオバブの夕暮れ。
この文章は世界の街を切り取った旅エッセイです。
題して「見知らぬ異国で、ひとりごつ」
午後、トゥクトゥクに乗る。サファリへ向かった。
森の中で、ガイドが止まった。
レムールがいた。キツネザルだ。
動きが、緩慢だ。ゆっくり、ゆっくりと、枝を伝って移動している。木の葉を、もぐもぐと食べている。急ぐ様子が、まったくない。
こちらをじっと、見つめてくる。
大きな目。黄色い瞳。
そして、また葉っぱを食べ始めた。
わたしのことなど、どうでもいいらしい。
やれやれ。
ガイドがわたしの腕を掴んだ。
木の幹を指差す。
最初、何も見えなかった。
だが、よく見るといた、カメレオンだ。
緑色の、小さなカメレオン。木の幹と、完全に同化している。
わたしが近づくと、カメレオンの色が、ゆっくりと変わった。緑から、茶色へ。
生き物が色を変える。不思議。
夕暮れどき、バオバブの並木道に着いた。
バオバブは、不思議な木だ。
太い幹。短い枝。
まるで逆さまに植えられているように見える。根が上を向いている。そんな風に見える。何本も、道の両側に立っている。高さは三十メートル以上。幹の太さは数メートル。
太陽が沈んでいく。
空がオレンジ色に染まる。そして赤く染まる。
バオバブの木も、赤く染まった。
逆さまの木が、夕陽に照らされて、赤く輝く。シルエットが空に浮かび上がる。
わたしはただ、見ていた。
夕陽は沈み続ける。赤が濃くなる。オレンジから深紅へ。
バオバブの木は動かない。何百年も、ここに立っている。
対照的に旅人のわたしは移動し続ける。
やがて、暗くなった。
海辺の小さな食堂。ローカルなレストラン。
ガイドが、エビを頼んでくれた。
運ばれてきたエビは、デカかった。手のひらほどの大きさ。
ただ焼いただけ。塩と少しのガーリック。それだけ。
殻を剥いて、ひと口。
ぷりっとした食感。じゅわっと甘みが広がる。
もう一匹、また一匹。と口に運ぶ
海が近い。波の音がする。ざぶん、ざぶん。
緩慢なレムール。色を変えるカメレオン。赤く染まるバオバブの木。
エビを食べ終わって、トゥクトゥクに乗った。
宿へ戻る道すがら、空を見上げた。
星がたくさん出ていた。
―ああ、またひとつ、見知らぬ異国で、ひとりごつ。
マダガスカルの動物についてはこちらの写真記事が素晴らしいです
【出典:yanakijiサイト】
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