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ぼろぼろの体で、「日常」へと舵を切る。

この文章は世界の街を切り取った旅エッセイです。
題して「見知らぬ異国で、ひとりごつ」


ベッドの上で、ガタガタと体が震えた。安宿の二段ベッドが地震のごとく揺れる。熱がある。全身から汗がじっとりとあふれ、シーツが肌にべたべたと張りつく。この旅で最悪の体調だった。

飛行機で日本へひとっ飛びするのは、あまりにも味気ない。一年をかけて歩いた旅路が、たった数時間で終わってしまうなんて、どうにもしっくりこなかった。
そこで、わたしは台湾から沖縄へ向かうフェリーのチケットを買った。かつて日本と台湾を結んでいた有村産業の船は令和の今もうない。時代の流れだろうか。格安航空券の勢いに押されて、多くの旅が簡略化されたのかもしれない。
それでも、船旅を選んだ。片道18000円。安くはないけれど、それでよかった。

夜市がいいという台北の街に出る気力もなく、ほとんどの時間を宿で横になって過ごした。翌日、このまま去るのはあまりにもったいないと、午後にMRTに乗り、龍山寺へ行った。豪華で派手な中国風の寺院。その荘厳な姿をただ眺め、旅の終着を実感していた。
冬なのに台北は、電車のクーラーがひんやりと肌を刺すほど寒かった。

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台湾の基隆港。夜の六時。船は静かに出港した。乗客はわたしの他に数人しかいない。

船のデッキに出る。天気は良く、波は静かで船はゆらゆらともほとんど揺れない。ざあーと聞こえる波の音が、ただ心地いい。
一年と十日。この期間、一度も働かずに旅を続けられたのは、日本という裕福な国に生まれたおかげだ。そのことに、心から感謝した。
日本人は日本で生まれたというだけですでに一生分の幸福を得ているのだ。

明日、目が覚めると、旅は終わってしまう。
わたしは日本に帰って、何をするのだろうか。
仕事も住む場所も決まっていない。
この旅で得たものは何だったのだろうか。
何か大きなことを成し遂げられなかった、という虚無感。でも、何かを成し遂げるために旅をしたわけでもない。ただ、世界を自分の足で歩きたかっただけなのだ。
右も左もわからないほぼ初めての海外一人旅。
孤独に負けず、よくやってきたと思う。

もう繰り返す移動には疲れてしまった。この船を降りたら、また現実が待っている。しかし、もうむずむずと旅に出たい気持ちはない。新しい景色よりも、自分の足元をしっかりと見つめる時が来たのだ。

―ああ、またひとつ、見知らぬ異国で、ひとりごつ。

Google Geminiと相談しながら創作しました。
カバーイラストは「宮崎駿」風のアニメイラストでお願いしました。


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