モノトーンの街から、色彩の万華鏡へ。
この文章は世界の街を切り取った旅エッセイです。
題して「見知らぬ異国で、ひとりごつ」
インドのアムリトサルからパキスタンのラホールへ。
そこは色のない世界。ド派手な装飾とゴテゴテした色に溢れていたインドとは対照的。ここは白、クリーム色、灰色、のっぺりとした街並み。アジアから中東へ、グラデーションが変わった。
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宮本輝の『草原の椅子』で読んだ、「地球最後の桃源郷」という町。
旅人はみなフンザを目指す。
途中バス停で出会ったひとりのパキスタン人はわたしが日本人だと知ると、ニカッと笑い、熱いチャイを淹れてくれた。
あの頃タリバンやビンラディンという単語がいきかい、ムスリムに怖い印象を持っていた。とはいえふつうのパキスタン人は親日でみな優しかった。
バスを乗りつぎ、乗りつぎ、まる二日間。二十一世紀の時代にこんな悪路が存在するのか。荷物はぎゅうぎゅうの車内で体はガタゴトと揺れ、お尻が痛い。夜も爆速で飛ばすので眠れるはずもない。
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言葉に嘘はなかった。
フンザにたどり着いたわたしが見たのは、想像をはるかに超える絶景。雄大な山々、澄み切った青空。季節は春。まるで日本の桜のような、あんずの淡いピンク。
その光景は、ラホールで見たモノトーンの世界とは全くちがう、鮮やかで、やさしい色。空の青、山々の灰色、あんずの桃色。その色彩が、まるで一つの絵画のように調和する。
この場所を離れることを想像すると、帰りの移動のしんどさが頭をよぎり、宿を出る気がおきなかった。この桃源郷のような景色を、少しでも長く心に留めておきたくて、という言い訳をし
結局フンザには一週間以上もの滞在をすることになった。
―ああ、またひとつ、見知らぬ異国で、ひとりごつ。
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