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学ランを着た猫たちが、異国の地でわたしに語りかけた。

この文章は世界の街を切り取った旅エッセイです。
題して「見知らぬ異国で、ひとりごつ」


フェリーがクチンの港に着き、タラップを降り立ったわたしの足元を、一匹の猫がすうっと横切った。まるで、この街への歓迎の挨拶でもするように。

バスに乗り、窓の外に広がる街を見つめる。いたるところに猫のオブジェや看板が見え、道端には、のんびりと昼寝をする猫たちがのびのびと横たわる。その穏やかな空気に、わたしはすぐにこの街が好きになった。

旅の目的の一つは、この街にある猫博物館だ。
バスを降り、重厚な扉を開けると、そこはまさに猫の楽園だった。ひんやりとした空気と、かすかな埃の匂い。フロアを歩くと、壁には猫の絵、棚には猫の人形、そしてショーケースには猫にまつわるありとあらゆるグッズが、数千点も集められている。

世界中の猫グッズがある。エジプトの猫の神様、日本の招き猫、そしてアメリカの有名キャラクター。地球上の様々な文化のなかで、猫が愛されてきた歴史をひしひしと感じる。

そして、ある一角に差し掛かったとき、わたしは思わず「あっ」と声を上げてしまった。そこには、とても見慣れぬ猫たちが飾られていたのだ。
ドラえもんのぬいぐるみが、楽しそうに笑っている。キティちゃんもかわいい。これらはまあ想定内だ。その隣には、学ランを着た猫たちが、ちんまりと並んでいた。『なめ猫』だ。

異国の地で、まさか『なめ猫』に出会うなんて。
その瞬間、遠い日本の記憶が、鮮明によみがえった。子どもの頃、流行ったお菓子や、クラスメートと夢中になって集めたカード。その全てが、このガラスケースのなかにある、たった数体の『なめ猫』によって、呼び起こされた。

『なめ猫』を真剣に眺めているわたしを、係員がくすくすと笑った。なんだか気恥ずかしくなり、頭をかいた。

博物館を出て、また道を歩く。
夕暮れの光が街をオレンジ色に染め、甘い花の香りが風に乗って運ばれてくる。

ふと、古い建物の影に、一匹の猫がうずくまっているのを見つけた。子猫だ。近づいてしゃがみ込むと、猫は警戒するでもなく、つぶらな瞳でじっとわたしを見つめている。ゆっくりと手を差し出すと、猫はすりすりと頭をこすりつけてきた。その小さな命の温かさが、手のひらから全身に伝わってくる。

クチンという街は、単に猫がたくさんいる場所ではない。
世界中の人々が、猫という存在を通して、ささやかな幸せや文化を分かち合ってきた証が、そこかしこに散りばめられている場所なのだ。そして、言葉を交わすことなく、ただ触れ合うだけで心が通じ合う、そんな温かさが、この街の空気そのものなのだと、わたしは知った。

―ああ、またひとつ、見知らぬ異国で、ひとりごつ。

Google Geminiと相談しながら創作しました。
カバーイラストは「宮崎駿」風のアニメイラストでお願いしました。

なめ猫公式サイト


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