記憶のレンズ
祖父の遺品整理で見つかったのは、見たこともない古びた二眼レフカメラだった。

レンズの周りには、奇妙な文字で「KAKORA」(カコラ)と刻まれている。
カメラが趣味だった大学生の蓮(れん)は、ファインダーを覗き、何気なく自分の部屋の壁に向かってシャッターを切った。
カシャリ。
チェキのように足元から滑り出てきたのは、真っ黒なフィルム。

しかし、数秒経つと、そこにあり得ない景色が浮かび上がってきた。
映し出された「空白」
写真に写っていたのは、今の蓮の部屋ではなかった。
大きなバースデーケーキ、そして、満面の笑みを浮かべた若い男の人の姿。

蓮「……誰、これ?」
蓮にはまったく見覚えがない。しかし、その男の人の顔は、どことなく自分に似ていた。
気になって、蓮はカメラを首にかけ、実家へと向かった。
母親にその写真を見せると、彼女は息を呑み、ぽろぽろと涙を流し始めた。

母「これ……あなたの5歳の誕生日よ。その人は、お父さん。あなたが小学校に上がる前に、病気で亡くなったの」
蓮は幼い頃の熱病が原因で、小学校低学年より前の記憶がすっぽりと抜け落ちていた。
父親の写真やアルバムは、母親が悲しみに耐えかねてすべて処分したと思い込んでいたが、実際はそうではなかったのだ。
蓮「このカメラ、おじいちゃんが持ってたんだ。これって……」
母「ああ、おじいちゃん、言ってたわ。
『あの人は人間の【忘れてしまった記憶】を現像するカメラを作っているんだ』って。本当だったのね……」
記憶の答え合わせ
蓮は確信した。
このカメラは、被写体やその場所に関わる
「失われた記憶」を呼び覚まし、
像として結ぶものなのだと。
蓮はその後、カメラを持って街に出た。
幼馴染のあかりに向けてシャッターを切ると:
2人が幼稚園の砂場で、大喧嘩の末に「大きくなったら結婚する」と指切りげんまんをしている、すっかり忘れていた気恥ずかしい約束が写った。

いつも不機嫌な近所の頑固おやじに向けて切ると:
彼が若い頃、大切に飼っていた犬を愛おしそうに抱きしめている、今では心にしまい込まれた優しい記憶が写った。
カメラが映し出すのは、脳の片隅で眠っていた、けれど確かにそこにあった温かい時間ばかりだった。
最後の1枚
フィルムは残り1枚になった。
蓮は、もう一度自分の部屋に戻り、鏡に映る自分自身に向かってレンズを向けた。
蓮「僕が本当に忘れてしまった、一番大切な記憶は何だろう」
カシャ、と静かな音が部屋に響く。
現像された写真に写っていたのは、病室のベッドの上だった。

痩せ細った父親が、小さな蓮の頭を撫でている。
父親の口元は、何かを呟いているように動いて見えた。
蓮はその写真を見つめるうちに、頭の奥がじわりと熱くなるのを感じた。
写真の底から、ずっと忘れていた「音」が蘇ってくる。
『蓮、お前が大きくなって、もしパパを忘れてしまっても、パパはお前をずっと愛しているからね』
それは、蓮の脳が忘れてしまっていた、けれど魂が覚えていた父親の最後の言葉だった。
気がつくと、蓮の目から涙がこぼれ落ち、写真の上の父親の笑顔を濡らしていた。
エピローグ
カメラはそれきり、シャッターを押しても動かなくなった。
まるで、役割を終えたかのように。
蓮は、父親が写った2枚の写真を机に飾った。
記憶は薄れてしまうもの。
けれど、消えてなくなるわけじゃない。
青年は新しく買った普通のデジタルカメラを手に取り、今度は「未来に残すための記憶」を写すために、再び街へと歩き出した。

ショートフィルム『記憶のレンズ』
今回の作品は、PolloAI×しろねんコンテストの企画で動画を作らせて頂きました☺️
ストーリー部門の応募作品です🍀
動画を作るってやっぱり楽しいですね✨
沢山失敗もしたので、NG集も作ってみました🤣
恥ずかしいから見ないで〜〜〜🫣
PolloAIの会社の皆さん
しろのあるさん、ねんころさん
本当に楽しくて素敵な企画を
ありがとうございました😊

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