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【映画感想】 No.55『ガタカ』遺伝子操作で消せない劣等感

ディストピア映画のカテゴリになるのかな?遺伝子操作で生まれた“適性者”が社会を支配する近未来。自然出産で生まれたビンセント(イーサン・ホーク)は心臓疾患があるが、宇宙飛行士になることをずっと夢見ている。

対してビンセントの弟アントンは適性者として生まれた。ビンセントとアントンは切磋琢磨しながら育ってきたが、ある日の水泳対決で立場が逆転する。

宇宙飛行士を夢見るビンセントは”不適正者”であるため、清掃業者の仕事に就くのが関の山。しかし、DNAブローカーと出会ったことをきっかけに下半身付随の元水泳選手ジェローム(ジュード・ロウ)のIDを手に入れる。そしてビンセントは”ジェローム”として宇宙関連企業ガタカに入社することに成功。ガタカで収入を得てジェローム本人に還元する日々が始まった。

イーサン・ホーク、ジュード・ロウ、ユマ・サーマンが近未来セットの中で華麗に行き来する。それだけでため息が出るほど美しいうえ、マイケル・ナイマンの音楽がさらに艶めかしい彩りを添える。「イーサンとジュードの顔、似てないと思う…なりすますの無理では…?」なんて設定の無理がどうでも良くなる画の強さだ。

遺伝子操作を行い優生人類だけで社会を作ったところで、結局足を引っ張るのは人間が持つ劣等感なのだ。だからいつまで経っても兄弟は水泳対決に拘るし、体力差で負けることに凄まじい恐怖を感じる。この映画が作られてから30年が経過し生物学的な”強さ”に評価の重きが置かれなくなってきたとは言えるが、それでも一番わかりやすくて容赦のない評価基準であり、多くの人間がこの評価を恐れている。

この映画で一番強いのは、障がい者となったジェロームだと思う。誰かに成り代わろうとせず自分を差し出して生きる術を得ようとし、腕の力だけで遺伝子図のような螺旋階段をよじ登る。人生の幕引きを自分で決めるところも彼らしかった。

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