守破離⑦
盗難
除霊のお供した同じ年、2021年のお正月を少し過ぎた時の事だった
彼から電話がかかってきた
「もしもしえりちゃん? 500円玉貯金盗まれちゃった あんた、正直に言いなさい」
後半はもちろん冗談で、私が最後に彼のお宅にお邪魔したのは年末でその時は押入れの奥深くしまった500円玉を入れた缶と袋はあったらしい
元旦に友達のKさんが来て、その時もあった
ただその後、二日三日と一人で旅行をして、四日に帰ってきたら缶と袋は忽然と姿を消していたと言う
彼が留守の間、彼のパートナーが独身の男友達を招いたそうだ
500円玉貯金をしているのはfacebookの投稿から知っていた
その年2021年の春には故郷のF県に帰るから、その時に実家の古くなってしまった家具やカーテンなどの代金をこの貯金で賄うと聞いていた
貯金は20万ちょっとあったらしい
「でも、パートナーさんがいたんですよね? どうやってその男友達さんは貯金を道けたんでしょう?」
と私は質問してみた
「あの人寝てしまうから、きっと寝てる隙に家探したんだと思う」
「でも」
と私はまた反論してしまう
「総額20万ちょっとの500円玉って、かなりの量と重さですよ。いくらパートナーさん寝ていたとはいえ、寝ている隙に探して見つけて自分のバッグに移せるのかな・・・ジャラジャラ音するだろうしめっちゃ重いですよね。何食わぬ顔で持ち出させる重さなのかなあ」
「その男友達のγくん、お金に困っていそうだし度々遊びに来ている時に狙いつけてたんじゃないかと思うんだよね・・・Tちゃんに視てもらったら、持っていったの男の人よって言われたし」
Tちゃんというのは彼が見出した同じF県の霊能者の女性だ
私は伊勢の一件からお金に関する歪みを感じていたので、何か警告というかそんな感じがした
「なんとなく、F県に帰るのは今じゃないかも知れませんね」
と私は言った
実際彼はこの時期は調子が良かったので、その後東京に留まり五月に一人芝居をした
私は勿論手伝った
小道具を買ったり、小道具を作成したりパンフレットを作ったりした
他の役者さんともお会いしたりして、春から五月はそうして過ぎていった
くだんの女社長とその下で働くκさんと彼の三人の関係はこの時が一番ピークだったと思う
私は一人一人は好きだったけれど、三人が揃うと調子が狂った
それは今思うと、三人のお金が欲しい、稼ぎたいというエネルギーにくらくらしてしまっていたのだと理解が出来る
だけどその時は分からなかった
ただただくらくらして、何もできなくなる足手まといの後輩という立ち位置にいた
一人芝居は無事に終わり、なぜか道具を私の家に預かる事になった
神棚に使うお水を入れる白い椀と盛り塩を三角にする器具もあった
芝居する空間を清める為に彼が使用したものだ
私は道具を整理しようとタオルに包んで持ち帰った盛り塩を作る三角錐を手に取った
私は驚いて、その三角錐を落としてしまった
ゴキブリがいたのだ
よりにもよって神事に使う道具にゴキブリが潜んでいるなんて・・・
私は清める為のもの一式を全て捨てた
この事は彼には言えなかった
奇妙な写真
一人芝居が終わって季節は夏になろうとしていた
久しぶりに新宿で彼と会う事にした
テラス席のあるカフェの席に座ると、
「やっぱりあんた落ち着くわー」
と彼は言った
つい数日前まで、彼は女社長とその下で働くκさんと三人で五島列島に行っていた
リトリートというやつだ
「あの二人といるとお金遣ってねえ・・・高いところ行きたがるから、旅行の間じゅう高いレストランだったのよ」
よく晴れた日で、彼はビールを美味しそうに飲んだ
κさんがなぜか私も加えてくれたグループラインで、五島列島の風景を写真で送ってくれていた
海風でさびれた神社の鳥居の写真とか、みんなでご飯を食べている様子とかが旅行中に送られて来ていた
その時に、女社長さんが撮ったという写真に驚いた
もうそのグループラインも消してしまったし、その写真も保存していなかったので絵で再現するしかないのだが、こんな感じだった
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