忘れ物を取りに-出雲予選を終えて
中長歩パート修士1年の林啓樹です。
つい先日登場したばかりですが、今回執筆を推薦していただきました。有難い限りです。
今回は、先日行われた第38回出雲全日本大学選抜競走北海道地区予選会(以下、出雲予選)について、私の視点から所感を書いてみようと思います。
「北大を出雲に連れて行く!」
先日の出雲予選の振り返りを行う前に、まずは昨年の出雲駅伝について、少しだけ書こうと思います。
2年前の10月に出雲駅伝の北海道地区の出場枠が単独2校になると分かってから、「北大を出雲に連れて行く」ということが私にとっての大きな目標になりました。
その年の年末、部員全員の前で、「エースとして出雲予選を走り、北大を出雲に連れて行きます」と決意表明したことを今でも鮮明に覚えています。
それから出雲予選までの約半年間、私にはその言葉が暗示のように、強く刻まれ続けていました。
目標達成、そして燃え尽きた
そして迎えた、2025年の出雲予選当日。
私は予選会出走メンバーとして、2組目を任されました。
結果は2組目1着。チームも総合2位となり、2021年以来2度目となる本大会出場を決めました。

私にとって、その年一番の目標が達成された瞬間でした。
同時にそれは、その先の目標へと進むことを心身が拒否した瞬間でもありました。
思えば、昨シーズンは4月終盤から7月末まで約2,3週間に1回大会に出場するというタイトな日程であり、そこに教育実習や院試の準備なども重なったことで、心身の疲労はピークに達していました。
絶対入賞を掲げて挑んだ7月末の七大戦で散々な結果に終わり、そこからは疲労が抜けない、練習量も積めない、ポイント練習でも設定を落とさざるを得ない、という負の連鎖に陥りました。
焦る私に追い討ちをかけるように、9月半ばの記録会当日に発熱。おそらくコロナウイルスに罹患していたものと思われます。出雲本戦のエントリーメンバーのチーム内選考が佳境となっていた時期に、当時当落線上だった私にとって、出雲行きが大きく遠のいた出来事でした。
そして、エントリーメンバー発表の日。
私の名前はありませんでした。
それまでの自分自身の行動、練習状況に原因があったことは紛れもない事実です。
しかし、多少なりとも出雲出場に貢献した自負があった当時の自分にとって、その事実はすぐに受け止めることができないものでした。
今思えば、出雲予選後の私は、「北大を出雲に連れて行く」という有言実行を成し遂げたかのような気持ちで、天狗になっていたのかもしれません。
チームでつかんだ本戦出場。だからこそ、最後までチームのために動く。チーム全体で切磋琢磨して、本戦で更に結果を出す。
それが当時の私に欠けていた気持ちであったと感じます。
目を背けた本戦と、再び訪れたチャンス
出雲駅伝本戦当日。
私は自宅にいました。
今だから話せることですが、当日は一切の中継映像を観ていません。
自分が走るはずだった舞台を直視することが怖かったというのが本音です。
チームメイトの皆、本当にごめんなさい。
それでも、結果が気になって、各区間の通過タイムを確認していました。すると、「来年も北海道に単独2枠」という文言が目に入ります。
しかしこの時、本戦に出場できなかったショックを引きずっていた私にとって、来年の出雲駅伝について考える心の余裕はありませんでした。
どん底からの復帰
そこからは怒涛の日々でした。
11月の日体大記録会までは陸上を頑張ると決めたものの、5000mで15'47という中途半端なタイムを出して終戦。
そこからは卒業論文、そして大学院後期入試に追われ、12月〜2月頭までの約2ヶ月の総走行距離は120kmにも達しませんでした。
陸上を始めて以来のどん底ともいえる日々。
それでも、院試が終わった2月、久々に練習に顔を出してみると、そこには以前と変わらず温かい雰囲気のチームがありました。
離脱していた期間の代償は大きかったですが、プレッシャーの無い中で練習を積み重ねることで、走る楽しさを少しずつ思い出すことが出来ました。
二度目の出雲予選
トラックシーズンが近づくにつれて、私の調子も少しずつ戻ってきました。
練習方法を見直し、一回一回の練習の意図を明確化したこと。
そして、自分が継続できるペースの練習を積み上げたこと。
当たり前のことのようですが、学部生時代の自分が実践できていなかったことを積み重ねたことが、復調を後押ししたように思います。
5月半ばの記録会では、5000mでセカンドベストを記録。5月末の北海道インカレでも、1500mで入賞することができました。
チームメイトには「冬季練習を積んでいないのになんで走れるの?」と聞かれましたが(笑)、自分自身では少しずつ、練習の成果を実感していました。
そして迎えた、今年の出雲予選。
私は昨年と同じく、2組目の出走メンバーに選んでいただきました。
結果は昨年と同じ組1位。
チームも総合1位となり、二年連続3回目の本戦出場を決めました。
予選開催中、トラックを囲むように北大の選手が陣取って応援してくれていました。どこを走っていても「北大ファイト」の大声援。そして、「1,2,3位独占するぞ」の声。出場権を獲得するだけでなく、勝負に勝つんだという気持ちにさせてくれました。
最後の一周、鐘を受けて北大の選手三人が飛び出したとき、会場全体のボルテージが数段上ったことを鮮明に覚えています。

チームで戦っている。
チームが走らせてくれている。
応援の想いに応えるべく、最後のスパートをかけました。
自分なりに気持ちを見せることができたのかな、と思います。
北大の代表として、この予選を走れたことを誇りに思います。
忘れ物を取りに
私は今、スタートラインの前にいます。
約9か月前に失った、遠く神の国に在る忘れ物を取りに行くためのスタートラインです。
そこにはチームメイトという名のライバルたちもいます。
チーム内競争というものは時に残酷であり、そこには美しい感情だけでは語れないものが存在するのも事実です。
だからこそ、私はその競争から逃げることなく、チームメイトと高めあって、しのぎを削って、その競争を勝ち抜く覚悟です。みなさん、バチバチやりましょう。
そして、本戦では北大の名前を背負って走ることになります。
おそらく、苦しいレースになるでしょう。
本州の出場選手との差は、この3か月で埋められるようなものではないかもしれません。
それでも、北大を代表して走る以上、気持ちを見せるレースをしたいと思います。出雲予選当日に感じた「チームで戦っている」という感覚は、遠く出雲路でもきっとあるはずです。
そして何より、一度どん底に落ちた自分を再び迎え入れてくれたチームメイトに、感謝を伝えられるような走りをしたいと思います。

おわりに
改めて、北海道大学陸上競技部は、第38回出雲全日本大学選抜競走に北海道地区代表として出場いたします。
ここまで個人的な話ばかりしてしまいましたが、最後にチームを代表して、沢山の応援の声を頂いたことに心から御礼申し上げます。
昨年の出雲駅伝本戦は、我々にとって本州勢との差をまざまざと見せつけられる、苦しい戦いでした。
もちろん今年も、タフな戦いになることが予想されます。
それでも、いや、だからこそ、その逆境を跳ね返し驚かせることが出来るのが、陸上競技の魅力ではないかと私は思います。
簡単な挑戦ではありませんが、若い力とベテランの意地を結集して、残り100日を切った本戦に向けて準備していきます。
本戦での走りにご期待ください。
ここまで読んでいただき本当にありがとうございました!

