その翻訳に称賛と溜息を ―― リード・ミー・ディス4Days/Day3
リード・ミー・ディス
MC:ミライ
▶️沈黙のバイオネット――
リード・ミー・ディス4Days/Day2
数千年の時を越えて蘇った声は、神々しい祈りではなく、 私たちが今スマートフォンで打ち込んでいる、見苦しい罵倒と同じものでした。
サエコです。
ミライが海の深淵に耳を澄まし、アイさんが足元の森の痛みを解剖してくれたこの二日間。
翻訳という光は、私たちの知らなかった空間の広がりを見せてくれました。
でも、テクノロジーが拡張しているのは空間だけではありません。
AIは今、砂や灰に埋もれていた時間の壁すらも透過し、かつて生きていた人々の声を現代に呼び覚まそうとしています。
【解説:古代文字のAI解読プロジェクト】
2023年から24年にかけて、AIを用いた古代文字の解読が飛躍的に進んでいます。
「ベスビオ火山チャレンジ」では、西暦79年の噴火で黒焦げになり、開くことすらできないパピルスの巻物を、3D-CTスキャンと機械学習のパターン認識によって解読することに成功しました。
また、約5000年前のシュメール語やアッカド語の楔形文字を、AIが一瞬で英語に翻訳するモデルも開発されています。
数千年もの間、誰にも読まれることなく眠っていた文字。
それが最先端のアルゴリズムによって、ふたたび意味を持ち始める。
その圧倒的な技術の進歩には、ただただ称賛の拍手を送るしかありません。
私たちはつい、そこに神聖な神話や、失われた高度な叡智が記されていると期待してしまいます。
けれど、膨大なデータから解読されて出てくるのは、拍子抜けするほど普通の言葉たちでした。
「お前の売った銅、品質が悪いじゃないか!
金を出したのにひどい扱いだ!」
これは、古代メソポタミアの遺跡から発掘された粘土板に刻まれていた、世界最古の顧客クレームです。
他にも、隣人への嫉妬、恋人への未練、借金の言い訳など、泥臭い日常の記録が次々と翻訳されています。
なんだ、昔の人も私たちと変わらないじゃないか。
最初はそう笑っていました。
でも、その笑顔はすぐに凍りつくことになります。
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