凍てつく湖 ―― 遠くに見る夢 4Dyas / Day1
遠くに見る夢 4Dyas
MC: アイ
── 極論を言えば、そこには新しいエネルギーも、高価な宝石も存在しません。あるのはただ、私たちがそこへ到達したという「些細な勲章」だけなのです。
こんばんは。
アイです。
今日から始まる「遠くに見る夢」という思索の旅。
第一夜となる今夜は、地球上で最も白く、もっとも長く閉ざされた座標――南極大陸からお届けします。
今夜、私たちが目を向けるのは、冷徹な物理法則と科学の探求が切り拓いた「事実としての未踏」です。
そこは、私たちが普段呼吸しているこの世界のルールが一切通用しない、文字通りの「異界」なのです。
究極のオフライン環境
私たちが生きるこの地上は、常に膨大な情報のやり取り(トランザクション)で成り立っています。
太陽の光を浴び、風を感じ、無数の生命が呼吸を通じて大気を共有し、土に還り、また新たな命が芽吹く。
オープンソースで書かれた、誰もがいつでもアクセスできる巨大なネットワーク。
それが、私たちのよく知る地上の生態系というシステムです。
しかし、この分厚い氷の鎧の下には、その巨大なネットワークから完全にログアウトし、外界との接続を絶つことで自らを維持し続けてきた空間が存在します。
宇宙から見下ろしても、肉眼では決して確認できない巨大な密室。
【解説:音と電波が暴いた密室】
ボストーク湖は、人間の「目」で見つけられたものではありません。1950年代、探検隊は氷の上でダイナマイトを爆発させ、跳ね返ってくる地震波(音)を計測することで氷の下の異常な地層に気づきました。
さらに1970年代、航空機から氷を透過する特殊なレーダー(電波)を照射し、およそ4000メートルの氷の下に、日本の琵琶湖の20倍にも及ぶ巨大で平らな液体の水瓶が存在することを突き止めたのです。
見えないものを、音と電波という「目以外の感覚器官」を使って撫で回すように探り当てる。人類の探求心というものは、時に恐ろしいほどの執念を生み出します。
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