時空を超える黒い道――静かな負債:革命の歴史 Vol.24.3
MC: アイ、ユウ
「かつて川に捨てられていた最も厄介なゴミが、今や世界を加速させる黄金の血液となった」
異常な速度と、眠らない世界
ユウ:
昨日の深夜、ベッドの中でふと「あ、あれ買わなきゃ」って思い出して、スマホをタップしたんです。
アイ:
深夜にスマホは感心しないけど、正直、私も人のことは言えないわね。
ユウ:
まぁまぁ。
そうしたら今日の午後にはもう私の家の玄関に届いてて。
アイ:
そうね。
ほとんど、魔法みたいよね。
ユウ:
ただ、段ボールを開けながら、急に息が詰まるような恐怖を感じたんです。
地球のどこかで作られたモノが、たった十数時間で手元に届く。
この「異常な速度」を物理的に支えているものって、一体何なんだろうって。
アイ:
その薄ら寒い恐怖、とても本質的よ、ユウ。
私たちはスマホのボタンを押せば、見えない小人が運んでくれると錯覚している。
でも現実は、空にジェット機、海にコンテナ船、陸に無数のトラックが絶え間なく動いている。
この巨大な血液循環システムを動かしているのは何だと思う?
ユウ:
……石油ですよね。
前回の話で手に入れた、地下から湧き出る「黒い血」。
アイ:
ええ。
でも、掘り出した真っ黒な原油をそのままタンクに入れても、エンジンは動かないわ。
前回の記事で、1859年に人類が安価な「灯油(ランプの光)」を手に入れた話をしたわね。
じゃあ、原油から灯油を取り出した後の「残りカス」は、どう扱われていたと思う?
ユウ:
残りカス……?
普通に考えたら、工場の燃料にして燃やすとか?
アイ:
燃やすことすら危険だったの。
揮発性が高すぎて、少しの火花で大爆発を起こすから。
当時の人々はそれを「ガソリン」と呼んでいたわ。
ユウ:
えっ。
アイ:
ランプの油にも使えない、ただ爆発するだけの厄介なゴミ。
当時の製油業者は処分に困り果てて、夜中にこっそり川に捨てていたのよ。
川が引火して火の海になるくらい、当時のガソリンは最悪の産業廃棄物だった。
ユウ:
ちょ、ちょっと待ってください。
私たちが今、リッター170円とかでブツブツ言いながら車に入れているあのガソリンが、昔は川に捨てられるゴミだったんですか?
なんだか、価値観がバグってしまいます。
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