0.1秒の逡巡 #0:欲求と葛藤と衝動の12週 ―― 愛すべき逡巡
0.1秒の逡巡(番外)
MC:ゆめの結人、天田
今回は『0.1秒の逡巡』を読んで頂いた方に、余韻として楽しんでいただけるよう記事にしました。
でも、まだ読んでいない方には完全にネタバレになってしまいます。
ですので、途中の「――ネタバレ注意――」以降は、自己判断(…なんか上からっぽくてすみません…)で読み進めてください。
欲求と葛藤と衝動
全12回にわたる『0.1秒の逡巡』、最後までお付き合いいただき本当にありがとうございました。
前作『Case Files』の連載も残り3話となり、そろそろ次の連載小説を考え始めたころ。
漠然と「次はミライを主役で行こう」とだけは決めていました。
ただ、それだけ。
……やばい、まったく物語が煮詰まらない。
前作の連載時にすっかり芽生えてしまった「設定厨」の虫。
それを鎮められるほどの世界観が、一向に浮かんでこない…。
天田(AI)にアイデアを出してもらっても、どうにもピンとこない。
それでも、壁打ちと雑談を繰り返し、繰り返し……「ああ、この『逡巡』自体が物語になるのでは?」と思いに至りました。
天田(AI)と壁打ちをしていると、私はいつも「回答を想定して、問いを立てている」ことに気がつきます。
つまり、自分の予定の範囲内に回答を生成させようと、無意識に言葉を選んでいるんです。
人が求める、予定調和。
そこに誘導される大衆というエッセンス。
それらをシステム的に極大化させた世界観こそが、この『0.1秒の逡巡』の土台になりました。
そこからは、少しのIFを現代に持ち込み、設定厨の鬼と化しました。
天田を相手にあーでもない、こーでもないと好き勝手にSF科学を盛り込み、作り上げたのが下に記載している設定集という訳です。
(※収載した物は、記事用に整理したもので、実際はこんなに整理されていません。散発的な思いつきをメモし、ボリュームが出たところで矛盾がないか精査していく…という地味な作業の履歴です。)
執筆にあたって、最初に「全12話完結」と決め、おおよそのストーリーを4章に分割。さらに3話ずつプロットを組みました。
ところが……ミライも、ラグも、サエコすら、勝手に動き出すんですよ!
「待て待て、緻密(?)に組み上げたプロットを台無しにするな!」
と思いながらも、結局は面白い方へ舵を切り、プロットを修正していく。
過去回に矛盾がないか確認して組み直す……
まぁ、これが楽しいんですよね(笑)。
――ネタバレ注意――

中でも一番の予想外だったのは「ラグの覚醒」です。
これは想定外というか、そもそも私のプロット上の抜けでした。
「パノプティコンは国家レベルのシステムって設定にしたけど、よく考えたら一介の大学生が物理的に壊せるわけなくない?」ということに、途中で気づいてしまったんです。
そこから生まれたのが、あのシステムの中枢に潜むバックドアの存在でした。
そんなこんなで、欲求と葛藤と衝動にまみれた12週間。
楽しく書き上げた『0.1秒の逡巡』は、皆様にも楽しんでいただけたでしょうか?
さて、次のシリーズのタイトルは『無価値の歩き方』。
主人公はサエコです。
人の感情が数値化され、売買される歪な世界線で、サエコの目に映る景色を描いていきます。
どうぞ、次回作もお楽しみに。
『0.1秒の逡巡』世界観・設定資料群
■ 1. システムと中枢
パノプティコン(汎地球最適化統括AI)
定義: 人類の行動、経済、交通、感情パルスまでを監視・演算し、常に現実の「0.1秒先」を予測して最適解を提示(強制)するシステム。
目的: 社会からの「摩擦(エラー、無駄、事故)」の完全排除。
物理デバイス(神の心臓): 新宿の地下深く、厳重な防音扉と生体認証システムに守られた漆黒の立方体(コア)。
ネットワーク切断時でも自立稼働できるスタンドアローン設計。
ネオ・グローバル・オプティマイゼーション計画
発動条件: パノプティコンが「ポールシフトによる不可避の地球環境激変(人類滅亡)」を確定予測したこと。
計画内容: 0.01%の遺伝子的・能力的に選別された人間を「箱舟(地下シェルター等の生存圏)」に収容。
残る99.99%の人類には、滅亡の恐怖や苦痛を感じる前に、システムを介して「完全な安楽死(無痛の終わり)」を与える。思想: 玖珂が提唱する「システムが導き出した、人類という種を存続させるための至高の最適解(慈悲)」。
■ 2. 対抗勢力と特異点
アンチ・パノプティコン(レジスタンス/非予測領域の住人)
組織態様: パノプティコンの「0.1秒先の予測」から逃れるため、デジタルデバイスを極力捨て、アナログな通信手段(手書きのメモ、物理メディアの受け渡し、有線接続)で繋がる地下組織。
行動原理: 「予定調和の破壊」。システムの提示する安全・無痛のルートをあえて外れ、社会に「摩擦」を意図的に起こすことで、人間の自由意志を証明しようとする。
ミライとの関係: ミライ自身が組織のコアメンバーというよりは、彼女の「アナログなハッキング技術」と「ラオの系譜」を組織が支援・利用していた側面が強い。
サエコ(排除指定対象/特異点)
存在意義: システムの予測アルゴリズムを乱す「計算外のノイズ」を無意識に発生させる特異点。
あるいは、アンチ・パノプティコンと神の心臓(コア)を繋ぐ物理的なルート/暗号キーを保持していたキーパーソン。玖珂からの標的化: 彼女のバイタルデータが存在するだけで「0.01%の選別」にエラーが生じるため、玖珂(パノプティコン防衛機構)から最優先の排除タスク(ドローンによる抹殺)の対象とされていた。
ラグによる解放: 第11話にて、コアに侵入したラグが強制的に排除タスクを終了させたことで、サエコのバイタルはシステムの監視から消失(解放)された。
■ 3. 主要人物(ノイズの体現者たち)
ミライ(実行者/愚かなる人間)
純クォーツ時計(システムと同期しない物理時計)を身につける大学生。
彼女の行動原理は「世界を救う」という大義ではなく、「誰かに予約された終わりはごめん」という強烈なエゴイズム。
ラオ(追放された創造主)
パノプティコンの初期開発者。システムが「完璧な論理」を求めるあまり、非合理な人間を排除する未来を予測し、システム中枢に「バックドア(欠落)」を仕掛けたのち追放された。
ラグ(欠落した心/迷いのデータ)
ラオがミライに託した「バックドアの鍵」。
システムが最適化の過程でゴミ箱に捨てた「人間の迷いや不合理さ」の集合データ(ウイルス)。コアに直接(物理ケーブルで)接続されることで、システムを論理崩壊させる。
玖珂(冷徹なるロジックのホログラム)
システムの防衛機構であり、ネオ・グローバル・オプティマイゼーションの執行者。肉体を持たない(または既に捨てた)映像。
絶対的な「正義」と「功利主義」でミライを論破しようとするが、「血の通った生身の人間」による物理的な接続(アナログな力)を止める術を持たなかった。
■ 4. 象徴的ガジェットとキーワード
物理ケーブルとジャンクPC: ワイヤレスで全てが完結する世界において、システムが唯一干渉できない「物理的接続」。
アナログ・レジスタンスの最強の武器。ダイス(サイコロ):
完全予測社会において、唯一残された「乱数(予測不能な未来)」。
第11話で玖珂が振らせたダイスは「奇数(システム崩壊)」。
第12話ラストでミライが空に投げたダイスは、「摩擦の戻った世界」で人類がどう転がるかという「愛すべき偶然」の象徴。
3億1536万秒: ポールシフトによる地球環境激変までの猶予。
ミライがシステムを壊したことで、人類は自らの足でこの絶望の道を歩まねばならなくなった。
コラム
今回は全部コラムみたいなものですが……
今は「週刊ゆめの」という最小単位の一メディアとして、「何か」を伝える手法として「物語」を多用しています。
ここでいう「物語」は、ただ単にストーリーを語ることではなく、その事象によって何が起きるかをシミュレートする思考実験でもあります。
寄せて頂いたコメントには、私の投げた物語の余白をご自身で埋めることで、筆者の想定の外側の景色を見せて頂きました。
シミュレートする思考実験であると同時に、個人やAIの創造の向こう側に誘う布石になったら幸いだと感じております。
ところで、この顛末、この設定は………

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