月曜朝の憂鬱
目覚ましの電子音が、まだ暗い部屋に響き渡る。
枕元のスマホを手探りで止めると、静寂が戻った――が、それは一瞬だけ。
窓の外から、通りを走るトラックのエンジン音と、始発電車の鈍い響きが重なってくる。
布団から出るまでのわずかな時間が、週で一番長く感じられる。
「月曜か……」
吐き出した息は、自分でも驚くほど重かった。
鏡の中には、寝癖を直そうともしない、疲れた顔の男が立っていた。
頬の下に刻まれたうっすらとした影は、土日の休養では消えなかった証拠だ。
髭を剃る手も、どこか力が入らない。
通勤電車は、いつも通りのぎゅうぎゅう詰めだ。
吊り革を握る手の上から、別の乗客の肘が食い込み、背中にリュックの角が押し当てられる。
視線を落とせば、手元のビジネスバッグの端が擦れてほつれているのが見えた。
会社に着けば、パソコンを立ち上げる間もなく上司の声が飛んでくる。
「例の資料、今日中に修正しておいてくれ」
まだ口を開く前に、別の同僚がデスクに書類の束を置いていく。
取引先からは、昨晩送ったメールに既読もつかないまま、追い打ちのように電話がかかってくる。
カタカタとキーボードを叩く音、プリンターの紙詰まりを直す音、
そして上司の小言が、ひとつのBGMのように頭にこびりつく。
モニターに映る文字は、どれも似たような数値とグラフばかり。
指先は動いているのに、心はどこか別の場所に置き忘れてきたようだ。
ふと窓際に目をやると、冬の薄い光がビルの壁を白く染めていた。
それは一瞬、夢の中で見た景色のようにぼやけて――すぐに現実の冷たさに引き戻された。
