時空を超えて‥‥小説(一目惚れ1/4)
SS(ショートショート) or 短編
一目惚れ
神奈川県川崎市のマンションに暮らす水野安江は、小さい頃から周囲の視線を集めるほどの美人で、スタイルも良く、やさしさに満ち溢れた女性だった。しかしそんな彼女に唯一悔やまれることがあった。それは、左足の脛から足首にかけて生々しく残っている15センチ程の傷跡だった。
安江は高校卒業間近に鎌倉市の自宅近くで交通事故に遭った。相手は自転車に乗っていた21歳の男。安江は徒歩だったが、互いに足を傷める衝突事故だった。原因は自転車の男の過失だった。下り坂の角をスピードを落とすことなく確認もせず曲がり、そのまま衝突。安江が気づいた時は、二つの血の流れが一つに交わるところだった。安江はその時、男の負傷箇所も同じだったのを今でもはっきり覚えている。
その後安江は都内の大学に入学し、キャンパスからすぐの学生アパートに一人住まいを始めた。
暫くして男の声で携帯電話に着信が入るようになった。
(お前のせいですべてだめになった)
(覚えてろ、必ず酷い目に遭わせてやる)
留守録の怒声が電話を震わせた。安江は男の言葉の意味が理解出来なかったが、すぐに自転車の男の顔が浮かんだ。男の声色は事故の時の印象とは違い、ドスが利いた地獄の底から聞こえてくるような声だった。すぐさま着信拒否したものの、その後安江は夜道で男の影を感じたり、時にはアパートの部屋のドアを無言で叩かれたりと嫌がらせ行為を受ける。安江はその行動から電話の男はこの近辺に居る、と察して生きた心地がしなかった。これ以上執拗な脅しが続くようなら実家の母に話し、警察へ連絡するつもりでいた。
「よっ、安江、また来たよ。暇そうだね」
玄関ロビーに、矢口建生の声が響いた。若い警備員の鋭い視線が飛ぶ。
あのストーカー被害から4年が経ち、現在安江は、新宿西口にある大手電力会社の受付嬢として働いていた。漏れ漂う安江の魅力が、すべての訪問客を一瞬で包み込んでいた。
SORRY、GO TO NEXT PAGE
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