前日まで線路だった上を歩いたその先に−JR松山駅 新旧駅舎ノスタルジー
2024年9月に入ったばかりのある日のこと。
ひとつのニュースを耳にする。
それは「9月28日でJR松山駅の2代目駅舎での営業が終了。29日から71年ぶりに新駅舎での営業となる」という内容。
―JR松山駅。
愛媛県松山市にあるJR四国の拠点駅のひとつ。
普通電車はじめ、特急しおかぜ(岡山行き)、いしづち(高松行き)、宇和海(宇和島行き)の始発・終点駅である。
地元に住んでいた学生時代は県大会出場や資格試験などのイベント関連で利用し、社会人になってからは他県での出張・勉強会への参加で利用している。学生時、地元行きの列車の時間まで待合室で友人と話をしたり、一人その日あったことを思い返しながら自販機で買った缶カフェオレを飲んだりと、乗車までの時間は何かとお世話になった。
とはいえ、やはり元が1953年(昭和28年)に建てられた建物。「レトロ」とはいうものの、どうしても古臭さと不便さは否めない。四国の他3県の県庁所在地の駅舎はすでに新しくなっているのに、松山駅だけがまだといった点から見ても、さすがに何とかしてほしいなと思っていた。
(特にトイレだけでも新しくしてほしかった)
しかし、2020年のコロナ禍、そして妊娠・出産。日々が雪崩のように育児に飲み込まれて行くうちに気づけばJR松山駅へ足が向くことはなくなっていた。そんなところにこのニュース。
「旧駅舎が終わるって知ってたら、もうちょい行っときゃよかった。惜しいことしたな」
『新しくなってほしいとか思っていたのに、いざなくなると知ると惜しいとか寂しいとか思う人がよくいる』と言われているが、どうやら私もその一人だった模様。現金なものである。
新駅舎オープン日。
9月29日というと、少しずつ涼しくなる時期とは言え、昼間はまだまだ残暑が厳しい。なによりその日は夫は出張で不在。私一人で3歳児(当時)を見ながら人混みの中を移動するのは少々ためらいはあったが、やっぱり切り替えの時に巡り合うという機会はそうそうない。
なにより娘はまだJRの駅舎には行ったことがない。
「記憶に残るかどうかはわからんけど、旧駅舎と新駅舎を見れる貴重な機会に行った方はいいな」と考え直して、当日思い切って二人でJR松山駅へ。
駅舎が近づくについてびっくりしたのは「駅舎周囲の建物が見事にない」。

バッティングセンターや色々あった建物がものの見事に全部なくなっていた。もちろん、区画整理のためとは理解していたが、ここまでさっぱりないとさすがに動揺。
とはいえ、娘を連れているのでずっと動揺してても危ないので、気を取り直してそのまま新駅舎へ。
正直、どうやって新駅舎へ移動するんだろうと思っていたら、なんと旧線路を突っ切って通路ができているではないか( ゚д゚)!


後でYouTubeのまとめ動画で知ったが、どうやら最終日の営業が終わった後、夜通しで新駅舎への移動へできるよう、通路工事を行った模様。前日まであった改札口は取り除かれ、前日まで使われていた線路の上を渡って移動。なんとも言えない不思議な気分である。

新駅舎に入ると一番確認したかったのは「自動改札」。
そう。松山駅では自動改札はなく、まだ人の手で改札をしていたのだ。
「ホンマに自動になってるー!」

噂には聞いていたが本当に自動改札化してるのを見て、地味に感動する私(単純)。
娘が迷子にならないようしっかり手をにぎりながら、これまでなかった西口に行ってみたり、だんだん通り(おみやげ売り場)などあちこち回った後、娘にアンパンマン列車を見せてあげようと思い、入場料を払って新しい乗り場も見に行くことに。

岡山・高松行きのアンパンマン列車を見送った後、ふと見ると旧駅舎のプラットフォームが新線路の向こう側に。

(これは今しか見れん光景やろな)
iPhoneの撮影ボタンを押しながら、新しい思い出の一枚として収める。
なお、連れて行った娘はというと、なかなか見ない光景にはしゃいでいたが、予想していた通り、暑さで疲れてしまって寝てしまった。
もしかすると娘はこの日のことは「疲れた」くらいしか記憶に残っていないかもしれない。

かつてJR貨物・車両基地があったところは空き地に(現在は南伊予駅へ移設)
それから約1年半後。
そして先日。またしばらく駅に行く機会がなかったわけだが、先日、岡山での勉強会へ参加するため、久々に駅を利用することに。
オープン日に行ってから1年半。早いものである。


駅へ向かうと、旧駅舎は解体が進み、かつてあった線路はすでにない。プラットフォームだったとわかる古いコンクリート部分が残るだけになっていた。
駅の風景も少しずつ変わっており、タクシー乗り場とバス乗り場など一部のものが旧駅舎時代の面影を残すだけに。
これらもそのうちなくなってしまうのだろう。
入口は片側だけ。
改札は未だ人の手。
特急列車は縦並び。
駅内の店舗は古臭い。
トイレはお世辞にも綺麗と言えない。
県庁所在地の駅なのに…とずいぶん言われたものだが、それももう昔の話。
やっと新しくなったというのに、寂しさが募るのはなぜだろう。
やっぱりそれだけ節目の時にお世話になった証拠ではないか。
久々に特急しおかぜに乗車後、セブンイレブンで買ったコーヒーを飲みながらそんなことを思う。
大会出場で気力がなくなりかけの状態で混雑する待合室で帰りの列車を待った中学時。
当時大街道にしかなかった無印良品にいくために友達と移動した高校時。
資格試験の後にああだこうだと後悔しながら駅舎の中にあるお気に入りのパン屋さんで購入した大学時(現在はない)。
県外の勉強会から帰ってきた時に駅の写真をSNSに投稿すると「お疲れ様」とコメントが来て(帰ってきたな)と実感したフリーランス時。
善きにしろ悪しきにしろ思い出せば枚挙に暇がない。
それを思えば寂しい気になっても仕方ない気もする。
―そう言えば。
以前の旧駅舎では、駅出発時は発車後しばらくガタンガタンと揺れ、踏切の「カンカン」という音が聞きながら街の中をガタンガタンとうねりながらゆっくり進んで行っていた。
しかし、今は揺れはほぼなく、踏切の音もない。
到着前は「まもなく松山駅到着です」という車掌さんのアナウンスは同じだが、やっぱり踏切の音とうねりと揺れはなく、さらっと駅に到着。これまで、この動きを合図に降りる支度をしていた私としては少々戸惑ってしまった。
もちろん、高架になることでのメリットがあることはわかっているが。
こればかりは慣れていくしかない。
なお、現在のJR松山駅の周辺はというと、まだまだ開発途中でばかりで空き地が目立つ。事情はあるのだと思うが、正直遅さは否めない。色々思うことはあるが、ここでは伏せておく。
ただ、それでも先に進むために変化していくことには変わりはないし、新たに人それぞれ思い出ができる場所になることにも変わりはない。
もちろん私も同じこと。
これから先、どんな思い出を作り、何に寂しさを感じていくのだろう。
これまでのことを思い返しながら今日もまた少しずつ進んでいく。

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