妖しく微笑むその魔女は #ふぉれすとどわあふ
BRILLIANT_Sさんの②魔女がダークフォレストからいなくなっている。探す旅へ。
と
三羽 烏さんの③ふぉれすとどわあふと都会の関係
に続きます。

空飛ぶ絨毯に自分はおろか、人を乗せて飛ぶのは旅人にとってはじめてだった。いや、正確には大きなクマさんと小さくあどけない黒猫の二匹だ。
旅人が時空を行き来する時は、いつも身に着けているマントをひるがえすだけで事足りていたからだ。マントをひるがえせば、一瞬で別の世界へ飛び越えられた。
しかし、はじめて太古の世界へ足を踏み入れるのだ。この魔法の絨毯を手に入れていてよかったと思い直した。
時空の壁を越えて絨毯は未知の世界へ突入した。
上空から見えるダークフォレストは、その名が示す通り、実に暗く不気味さで覆われ、たとえ神だろうと一歩も入れはせぬと拒んでいるようだった。

「ケイ、怖くなないかい?」
旅人は絨毯が下降する前に仔猫のケイを抱き寄せた。
「大丈夫」
「少し揺れるかもしれないので、クマさんは両手足でしっかり踏ん張っていてください」
「うん」
とだけクマさんは言った。
「魔法の方位磁石を使おう」
それは『ふぉれすとどわあふ』店主ミユが授けてくれた物だった。
「この先に魔女の住処がある」
旅人が森の奥を指さす。
「ゆっくりと、静かに向かおう」
クマさんが声を落として言った。
「オーウェン。もう、降ろして、自分で歩く」
「わかった」
一人と二匹は深く暗い森を進んで行った。

しばらく歩みを進めていると、苔生した樹木の中に青紫色に光る羽根のようなものがよぎり、そのあとをカラスの鳴き声が響いた。
オーウェンは、左手で剣を握った。
「少し急ぐぞ。走れるか、二人とも」
「うん」
「ええ、大丈夫」
青紫色の大きな羽根を追っていく。
しだいにそれは、大きなマントを着た人らしき者だとわかった。
青紫色したマントを身に着けた者が、巨木をくり抜いた小屋の中へ入ろうとしていた。
オーウェンは、すかさず剣を抜いて魔女らしき者を制した。

「待て! ダークフォレストの魔女‼ もう、逃げきれんぞ」
そう言うとオーウェンは、魔女のフードを外した。
「シドニー‼」
クマさんとケイが同時に声をあげた。
そこにいたのは『薬草の書』を取り返しにダークフォレストへ先に来ていたシドニーだった。
「ヨークは? ヨークはどうしたんだ!」
クマさんは血相をかえてシドニーに詰め寄った。
「シドニーが魔女だったの?」
「ちがうよ!」
「君がシドニーか。私は時を越えて『薬草の書』を求めているオーウェンと申す」
シドニーは時の旅人オーウェンを目踏みするように見つめた。
「ヨークは地下牢にいる。日に日に元気がなくなってる」
シドニーとヨークの話によると、二人がミユから授けてもらった魔法のマントでダークフォレストに来たが、待ち構えていた魔女に捕らえられてしまった。隙をみてヨークは隠していた魔法のマントでシドニーを逃がした。その際、時空のゆがみが生じてしまい、見知らぬ大都会へ飛んで行ってしまったという。
「そこで、影を持たない不思議な男の人にあった。ミユのことも『薬草の書』のことも知っていた」
「うん」
クマさんが返事とも頷きともとれる一言を発した。
「それで魔女はどこにいる?」
「たぶん、ふぉれすとどわあふに戻ったんだと思う」
ヨークは、そう伝えるとシドニーから受け取った薬を口にした。
「それと、これを見て」
と、ヨークが一枚の絵をオーウェンに差し出した。
「魔女は、ふぉれすとどわあふの森か街に入って、人に溶け込んでいると思うんだ」
オーウェンに差し出された絵を見ていたケイが小さな声で鳴いた。
「ママ?」
「まさか……」
オーウェンも絵を見て絶句した。
シドニーもヨークも、そしてクマさんも状況を把握できずにいた。


次のテーマ
①ふぉれすとどわあふに現れた魔女
②都会の男の力とは

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