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夢想堂企画募集:みんなで探偵 part2②記憶の回廊

 皆さん、素敵な朝をお迎えになっていますでしょうか?
本日は、本屋カフェ「夢想堂」の企画:みんなで探偵第二弾 #失われた物語
田野緋海が担当いたします。



 図書館の奥深く、埃を被った書架の迷宮を抜けた先に広がっていたのは、黄昏時の空をそのまま切り取ったかのような、橙と紫が溶け合うような不思議な空間だった。足元には、無数の光る文字が浮かび上がり、まるで星屑の絨毯のようだった。それらは、失われた物語の断片であり、老作家が求めていたものだという。
「ここは、『記憶の回廊』。失われた物語たちが、忘れ去られる前に最後の輝きを放つ場所です」
 老作家は、杖で宙をなぞり、一つの文字を指し示した。それは、細く美しい筆跡で書かれた、古びた羊皮紙のようだった。
「これは、『泡沫の王女』の物語。かつて、海の底で栄えた王国の、儚くも美しい姫君の物語です」
 この高齢紳士の言葉に導かれるように、文字が光を発し、僕たちの目の前に幻影が浮かび上がった。そこには、真珠の髪飾りをつけた憂いを帯びた表情の乙女が、静かに佇んでいた。
「彼女は、人間の王子に恋をし、禁じられた恋に身を焦がしました。しかし、二人の恋は、海の掟によって引き裂かれてしまった」
「それって……」
 幻影の中で乙女は、悲しげな歌を口ずさんでいる。その歌声は、切なく、胸に沁み入るようだった。
「物語は、語り継がれることで生命を与えられます。しかし、忘れ去られた物語はやがて、この回廊で、光を失い、消えてしまう」
 紳士は、悲しげな瞳で幻影を見つめていた。

リトルマーメイド? クリス・コルファー著:「ザ・ランド・オブ・ストーリーズ」より

「私たちは、失われた物語たちに再び光を与えるために、旅を続ける必要がある」
 紳士の言葉に僕は、その重責に胸が熱くなった。
 教授に否定された僕の卒論テーマ。それは、忘れ去られた童話に秘められた人々の心の機微を紐解くものだった。
「先生、僕も、物語に光を与えたいです。僕に、できることはありますか?」
 僕は、老作家に訊ねた。
「君には、物語を紡ぐ力がある。その力で、失われた物語に新たな生命を浮き込んでもらいたい」
 老作家はそう言って、僕に一冊の空白の書物を手渡した。
「この書物は『記憶の書』。君の言葉で物語を紡ぎ、失われた物語を再び輝かせてほしい」
 僕は、その書物を手に取り深呼吸をした。
 目の前に広がる光の文字たち。
 それらは、僕に語りかけてくるようだった。僕はペンを握り、ゆっくりと、言葉を綴り始めた。
「泡沫の王女は、今日も海辺で王子の帰りを待っている。しかし、それは叶うことのない願い。彼女の涙は美しい真珠となり、海底へユラユラと落ちていく。それでも王女は、唄い続ける。愛する人が己の元に帰ってくる日を待ちわびて、唄いう続けるのだ」
 僕の言葉に呼応するように、文字が光を増した。幻影が、より鮮明になっていく。王女の歌声が、図書館全体に響き渡った。そこにいる誰もが心震わせた。
「物語は、終わらない。誰かが、それを語り継ぐ限り。物語は、生き続けるんですね」
 僕の言葉を受け、老作家は満足げに頷いた。そして、優しく僕の肩に手を置いた。
「さあ、次の物語を探しに行きましょう」
 僕と老作家は、再び『記憶の回廊』を歩き始めた。
 失われた物語たちが、僕らを待っている。僕たちの旅は、始まったばかりだ。

米俳優クリス・コルファー著:「ザ・ランド・オブ・ストーリーズ」


いつきさん、いつもありがとうございます😽

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