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satoshi_st
8月の彼女 (ショートショート)
8月の彼女は、なんだか憂鬱そうに見えた。
あさみの誕生日は8月だ。なのに
「夏が嫌い」
と彼女は言う。虫が嫌いだけど、その時期はたくさんいるかららしい。
そんなことを言うなら春もそうだけれど、あさみは首を振った。
「虫なんて何でいるの。この世から消えていなくなっちゃえばいいのに。
それだけじゃなくて、気温もよ。なんであんなバカみたいに暑いの、おかしくない?」
それは、近頃私も考えていたことだった。まるで赤道みたいな温度、そして湿気。地獄だってこんなに過酷じゃないだろうって気がしてくる。
「でも、夏休みがあるじゃない」
あまのじゃくな私は、つい反論してしまう。彼女はまたかぶりを振った。
「夏休みなんてあっという間よ。あんまり長くないし。
その前も後も暑いんだからもっと長けりゃいいのにさあ」
それには同意するしかなかった。
けれど、頬をふくらませながらブツブツ文句を言う彼女は、欲目かもしれないけど可愛かった。私はそんな姿をそっと抱きしめたくなってしまう。
「言い返さないの?」
くぐもった声であさみが聞く。
「私もほんとはそんなに好きじゃない」
別に君といれば、季節なんていつでもかまわないと思いながら、その細い背中を腕に感じていた。
ああ、でも。夏だからって開放感に任せて酔いつぶれ、帰ってくるなり下着姿でキッチンで眠るのはやめて欲しいなあ。
そう思ったけど、今言うと20倍位になって返ってきそうなので、ただ黙ったまま彼女の温もりをじっと感じていた。
了
『8月の』という出だしで始まる小説を書いてみました(リハビリ中です)
