[#虹色創作部]風が紡ぐ静かな帰り道
虹くりっぷさんのお題「すすき」に参加します!!
サムネ用イラストも想像かきたてられますね。ありがとうございます!!
風が紡ぐ静かな帰り道
遠い日々の記憶のように、少女の耳には風のささやきが響いていた。
ススキの野は秋の金色、光の粒をこぼしながら、そよそよと揺れる。
この丘で、誰にも知られずに立ち尽くすのが、凛の日課だった。
「今日は泣かないで」
風はいつものように、優しく語りかける。
誰も信じてくれない声。
空想だと笑われ、孤独が深まるたび、心はうすく色褪せていく。
けれど、ススキの中に踏み込めば、空と続く道の先に風がいる。
夕映えがススキを銀色に染めたある日、 凛はそっと囁いた。
「あなたは、誰?」
透明な風の精は、かき消えそうな姿でそこに立っていた。
輪郭もない、だけど不思議に美しい。
「君が聞いたから、私はここにいる。 人はみな、風の声を忘れてしまうけれど」
凛の瞳に、ススキの穂がきらりと映る。
「わたしだけが、聞こえるの?」
「君の心は、澄んだ水面。 恐れや悲しみで曇っても、本当の声に耳をすませばよい」
風はススキの群れに舞い、光となって舞い降りる。
その瞬間、一筋の涙がほほを伝い、 胸奥の孤独がすこし溶けた気がした。
風の声が、優しい。
わたしは、だれでもない自分になっていいんだ。
秋の空はどこまでも高く、 ススキがさざ波のように響きあう。
夜の帳が降りても、風の精は消えない。
凛の中で、やさしい声が残るから。
「また、おいで」
風の精の声に見送られ、 帰り道の凛は、ほんの少しだけ笑顔になった。
ススキの野原と、風のささやきが、 彼女にとって“帰れる場所”になるまで。
―――終―――
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