私のワーク〈ライク〉バランスを変えたのは、時間管理術ではなく最先端技術だった

「もっと時間があれば創作できるのに」
以前の私は、いつもそう考えていた。
私は看護師として、急性期病院を中心に二十年以上働いている。二交代制の勤務で夜勤もあり、体力も気力も使う仕事だ。睡眠のリズムは崩れやすく、休日は疲れて一日中寝て終わることもある。
そんな私だが、最初から看護師になりたかったわけではない。
小さい頃は絵を描くことと空想することが好きで、将来はゲーム会社で働き、ゲームを作ることが夢だった。
しかし、真面目な母は不安定な職業に反対し、その夢を追うことはできなかった。
それでも社会人になり、自分で生活するようになると、「今なら好きなことに挑戦できるかもしれない」と思った。通信制のイラスト講座を受講し、絵の勉強を始めた。
ところが、看護師の新人時代は想像以上に忙しかった。
勉強、レポート、残業。その繰り返しで、絵を描く時間も気力もなかなか確保できない。それでも年に一度開催されるデザインフェスタには作品を展示してもらい、創作とのつながりを何とか保っていた。
しかし体調を崩したことをきっかけに、イラストは断念せざるを得なくなった。
その後しばらくは、看護師として働くことに精一杯だった。
ただ、創作への憧れが消えたわけではない。
文章を書くことも好きだった私は、「いつか自分で物語を書いてみたい」と思うようになった。
休日になるとベランダに小さな椅子を置き、ノートにアイデアや日々感じたことを書き留めていた。しかし、疲れ切って何もできない日も少なくなかった。
自分の中にある情熱がなかなか形にならない。
その焦りは少しずつ積み重なり、いつしかストレスになっていた。
当時の私は、創作にはまとまった時間が必要だと思い込んでいた。
今のように便利なアプリはまだ少なく、AIも身近な存在ではなかった。
イラストを描くにも環境を整える必要があり、小説を書くにも構成から推敲まで一人で試行錯誤するしかない。
創作には、とにかく時間と労力が必要だった。
一方で、看護師としての仕事も順調だったわけではない。
何度も挫折し、転職を繰り返した。
気がつけば、生きていくことそのものに必死になっていた。
毎日の仕事をこなすことが最優先となり、創作はどうしても後回しになっていった。
しかし、今は違う。
二十年という経験の積み重ねは、仕事の効率を上げ、以前よりも気持ちに余裕を持たせてくれた。
そして同じ頃、技術も大きく進歩した。
今では、パソコンの前に座らなくても創作ができる。
iPadがあれば場所を選ばず絵を描ける。スマートフォンがあれば思いついたアイデアをその場で記録できる。
さらに、CanvaやChatGPTのようなツールも活用できるようになった。
もちろん、それだけで作品が完成するわけではない。
考えるのは自分だし、選ぶのも自分だ。
それでも、途中で立ち止まってしまう作業を手助けしてくれる存在があることで、創作はずっと身近なものになった。
その象徴とも言えるのが、私がCanvaを使って初めて制作した「頑張らなくていい日記帳」だった。
デザインの専門教育を受けたわけではない。ましてや商品として販売できるものを作った経験もなかった。
それでも、ChatGPTと相談しながらコンセプトを考え、表紙のデザインを整え、一冊のノートとして形にすることができた。
完成した作品を見たとき、私は少し驚いた。
昔の私なら、「もっと勉強してから」「もっと時間ができてから」と考え、そもそも作り始めることさえできなかったかもしれない。
けれど今は違う。
技術の力を借りることで、限られた時間の中でも、自分のアイデアを形にできる。
そして何より面白かったのは、その最初の作品が「頑張らなくていい日記帳」だったことだ。
振り返ってみると、そのタイトルは、かつての私自身に向けた言葉だったのかもしれない。
創作を続けるためには、もっと頑張らなければならないと思っていた。
もっと時間を作らなければならないと思っていた。
しかし実際には、少し力を抜いてもよかったのだ。
完璧な作品でなくてもいい。
毎日何時間も創作できなくてもいい。
十分な時間がなくても、少しずつ前へ進めばいい。
気づけば私は、小説を書くだけでなく、デジタルノートをデザインして販売したり、イラストストックを販売したりと、さまざまな形で創作を楽しめるようになっていた。
私にとってのワーク〈ライク〉バランスとは、「やるべきこと」と「やりたいこと」をきれいに切り分けることではない。
看護師として働くことも、創作を続けることも、どちらも今の私を形づくる大切な時間だ。
忙しい毎日は今も変わらない。
むしろ経験を重ねた今の方が、任される仕事は増えているかもしれない。
それでも以前より創作を続けられているのは、技術の進歩が「好きなこと」を諦めなくて済む環境を作ってくれたからだと思う。
だから私は今日も、スマートフォンやiPadを開き、小さな創作の続きを始める。
