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『時空郵便局 第六便』「自分は偽物だ」と思うあなたへ——ミケランジェロ・ブオナローティの告白

「その違和感こそが、おんしの才能の証明だ。」


……そのように、石の粉にまみれ、震える手で己を疑うのはおやめなさい。

おんしは、
自分の力ではない、たまたま運が良かっただけだ、などと抜かすが、
それはこのわたくし、
ミケランジェロの生涯に対する、
そして大理石に宿る神の意志に対する冒涜に等しい。



良いですか。

わたくしが石の中から『ダヴィデ』を解き放ったのは、気まぐれな幸運などではない。
わたくしが人知れず、
どれほどの年月、
喉を石塵(いしぼこり)で焼き
血の混じった涙で鑿(のみ)を濡らしながら
ただ一点の真理を求めて石を叩き続けてきたか。


誰よりも長く、
誰よりも深く、
その冷徹な本質を凝視し続けてきたか。


おんしが手にした成功は、おんしの知性が、
暗闇の中で蝋燭の火を頼りに積み上げてきた『無数の決断』の集積です。


たとえ、おんし自身がその苦闘を忘れたとしても、おんしが削り出した『形』が、
その正しさを冷徹に証明している。



己の知性を信じぬとは、
これまでに流した汗と、
命を削って捧げた時間を、
溝に捨てるのと同じことなのです。

ピエタ像





さて、ここからはわたくしの『狂気』をお見せしましょう。


自分は詐欺師だ』と?

結構なことではありませんか。
このわたくしとて、
死ぬまで自分を詐欺師だと呪い続けてきた。


お聞きなさい。

わたくしの脳裏に刻まれた、
あの天上の『美』に比べれば、
わたくしが地上に遺した石塊など、
すべては拙劣な模倣
神への不敬を塗り重ねた虚像でしかなかった。


世間が傑作と崇めるものを見るたび、
わたくしは己の無能さに吐き気がし、
石を叩き壊したくなった。


おんしが自分を偽物だと感じるのは、
おんしが見上げている理想の頂(いただき)が、
今の卑小な己を遥かに凌駕しているからに他ならない。

その『剥離(はくり)こそが、
おんしが泥の中で満足して眠る凡百の家畜ではないという、何よりの聖痕(せいこん)なのです。



詐欺師であることを誇りなさい。

そして、
その『偽物の自分』という荒石を、
いつか本物さえもが跪(ひざまず)くほどの高みへと、狂ったように、
骨の砕ける音を立てて叩き上げなさい。


運だと笑う者には、
その浅ましい口を広げさせておけば良い。



おんしが最期の一刻(ひととき)まで削り続ける『己という彫像』だけが、唯一、神の審判を仰ぐに値するのだから。



おんしの命、
ただの臆病な沈黙という石牢に閉じ込めておくな。


ミケランジェロ・ブオナローティ


「偽物と呼べ。だが、その違和感という名の鑿こそが、おんしを真実の本物へと削り上げるのだ。」




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