【第7回】「障がいは人ではなく、社会にある」特例子会社で「芯のあるこんにゃく」を徹底した日々
念願の現場へ。「障がいは人ではなく、社会にある」
2023年7月、自ら希望しついに念願だった特例子会社(障がい者雇用の現場)での勤務がスタートしました。
この現場に立つにあたり、私の胸にはずっと大切にしている言葉がありました。 それは、かつて『二枚目の名刺』のプロジェクトで出会った、障がい者支援NPO代表の言葉です。
「障がいは人にあるのではなく、社会(環境)にある」 「障がいのある方に、できないことなんてない」
訪問ヘルパーとして重度障がいのある方の「海外旅行」などの夢を叶え、地域イベントでは全員が笑顔になるお芝居を企画していたその代表の姿は、私の憧れであり原点でした。
「関わる社員が何を楽しく感じ、何に悩んでいるのか。厳しい中にも、職場にたくさんの笑顔の花を咲かせたい」 そんな想いを胸に、私の新しい挑戦が始まりました。
ウィンザー効果で突き崩した、半年の「警戒心」
最初に取り組んだのは、社員一人ひとりとの丁寧な対話です。 話し好きな人もいれば、会話が苦手な人もいる。焦らず、一人ひとりのペースに寄り添うことを心掛けました。
しかし、全員がすぐに心を開いてくれるわけではありません。話が苦手なある社員は、半年が経過しても強い警戒心を抱いており、自分の思いや得意・不得意を語ってくれませんでした。
転機となったのは、他の社員からその方の業務上の成果を耳にした時です。 ご本人に「〇〇さんが『助かっている』って言っていたよ」と伝えた瞬間、表情が一変しました。
「えっ、なんで知ってるんですか?」
そこから笑顔がこぼれ、当時の苦労話を生き生きと語ってくれたのです。私と彼の距離が、一気に縮まった瞬間でした。
第三者からの褒め言葉の方が信頼されやすい――心理学でいう「ウィンザー効果」です。 これに手応えを得た私は、直接感謝を伝えつつも、「〇〇さんが感謝していたよ」「△△さんのおかげで納期に間に合ったよ」と、ポジティブな声を積極的に本人へ届けるようにしました。これは一例ですが、職場全体の警戒心が和らぎ、温かい空気が広がっていきました。
「芯のあるこんにゃく」――トラブルと向き合う現場のリアル
もちろん、すべてが順風満帆だったわけではありません。 時には、社員間の感情的なトラブルが発生することもありました。
これを「障害特性のせい」にして片付けてしまっては、本質的な解決には至りません。ここで私が徹底したのは、「芯のあるこんにゃく(柔軟さと折れない軸)」のような対応でした。
特に痛感したのは「初期対応の早さ」です。
髪型や服装のわずかな乱れ、表情の変化を見逃さない
社内ツールを活用し、メンタルの浮き沈みを早期にキャッチする
モヤモヤが小さいうちに直接話し掛け、早期解消に努める
さらに、職場内だけで抱え込まず、社内資源はもちろんのこと支援機関や主治医、ハローワークなどの「社外リソース」と迅速に連携し、当事者が心から納得できる着地点を粘り強く探る。一見当たり前に見えるこの「初期対応の徹底」こそが、数年に及ぶ泥沼化を防ぐ最大の鍵でした。
「配慮」はするが「制限」はしない。自律心を育む関わり
多くの社員は、自分の担当業務に対して非常に真摯で真面目です。 苦手なことがあれば自発的に社外資格を取得して克服しようとし、その背中を見た周りの社員が「自分もスキルを高めたい」と刺激を受ける。そんな素晴らしい能力の連鎖が起きていました。
手帳を持っていること以外、彼らは私たちと何も変わりません。 だからこそ、必要な「配慮」は徹底しつつも、過剰にかばって「制限」しないことが大切だと気づきました。
単に指示された作業をこなすのではなく、リーダーを中心にチームで課題を検討させる。 自分で考え、工夫し、壁を乗り越える経験を積んでもらうことで、彼らはやがて専門性の高い「高度な業務」まで対応できるようになっていきました。
キャリアアップ制度を活用し、自らの未来を描きながら活き活きと働く彼らの姿は、今や私にとって本当に頼もしい存在です。
次回予告
特例子会社で「対人支援」の深さに没頭する一方で、実はこの頃、私の中にもうひとつの大きな軸が生まれていました。
それは、高校大学と7年間打ち込んだ「ラグビー」への還元。 母校の大学ラグビー部で、学生アスリートたちのキャリア&メンタルサポートをボランティアで開始したお話です。
「障がい者雇用」と「アスリート支援」。 一見、全く異なる2つのフィールドが、どのように私の中で繋がり、相乗効果を生んでいったのか。次回、詳しくお話しします。
