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優しさという名の暴力 — マザコンが生まれる家の40年物語

目の前には、いつも“やるべきプロジェクト”があった。
仕事、勉強、就職、結婚、独立。
人生のすべてに締め切りがあり、責任があり、逃げ場がなかった。

……はずだった。

なのに、なぜか「気づいたら終わっている」。
自分は一度も“やっていない”のに、
いつの間にかすべてが片付いていた。

その理由に気づくまで、俺は40年近く気づかなかった。

家には、ずっと一人の“異性の化け物”がいたのだ。
もちろん本物の化け物じゃない。
母親だ。


母は、生まれた瞬間から俺の人生の“裏プロジェクト担当”。
しかも、すべて先回りで終わらせてしまう、最強の実務者だった。

俺が動かなくても、ご飯は出る。
俺が言わなくても洗濯は済む。
俺が困る前に、全部解決されている。

あれ?
いつまで何もしなくていいんだ?
もう40年、家では何もしていないぞ。

でも、母には母の論理がある。

「だって私がお腹を痛めて産んだ息子だもん」

この“一枚の免罪符”は強い。
何をしても許される。
甘やかすことが愛情だと、本気で信じてしまう。

大切に。
壊れないように。
傷が入らないように。
誰にも“奪われないように”。

過保護は、やがて“支配”に変わっていく。


そして時は流れ──

「この子、今いくつだっけ?」
「え、もう70歳?」

70歳の子供。
冗談のようで、実際に存在する話だ。

母は白内障で視界がぼやけ、膝は痛い。
でも今日も子供部屋には温かいご飯が置かれ、
「寒いから上着着なさいよ」と声が飛ぶ。

子育てって、どうすればよかったんだっけ?

母は忘れたのではない。
最初から知らなかったのだ。


優しさは、ときに“愛情の暴力”に変わる。
優しさの名前を借りて、
子どもから“自立”を奪ってしまう。

気づいた時にはもう遅い。
人生の締め切りは、すべて母が代行してしまっていた。
だから本人には、締め切りの意味すら分からない。

こうしてマザコンは出来上がる。

これは極端な話ではない。
どこにでもある話だ。
今日もどこかで“優しさのフリをした甘やかし”が、
新しいマザコンを生産している。

そして、多分母親自身もこう思っている。

「子育てって、どうしたら良かったんだっけ?」


あなたの家ではどうだろう。
少しだけ、思い返してみてほしい。

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