缶コーヒーがくれた小さな休憩
朝の自販機の前で、迷うことはなかった。
気づけば、いつもモーニングショットを押していた。
忙しい時期は、一日に数本。
缶を開けて、ひと口飲んで、
「ん〜っ、うまい」を3回。
その数秒で、なんとか気持ちを切り替えていた頃がある。
ブラックコーヒーを初めて“飲めた”のは、20代後半だった。
最初は、苦さに慣れるために飲んでいた気がする。
けれど40代後半になる頃、ようやく挽き立ての香りや、豆ごとの違いを「美味しい」と感じるようになった。
世の中には、こんなに香りのいい飲み物があったのかと、少し驚いたくらいだ。
それでも、自分の中の缶コーヒーは、やっぱりモーニングショット。
短い休憩。
移動の合間。
「あぁ、これこれ」と思える安心感があった。
そして50代。
健康診断の結果に、見覚えのないマークや数値が増え始める。
“様子を見ましょう”という言葉が、妙に増える年代でもある。
最近は、家で淹れたコーヒーをボトルに入れて持ち出すことがある。
少しだけ健康を気にして、少しだけ大人になったのかもしれない。
ちなみに、そのボトルは懸賞で当たったBOSS。
結局いまも、缶コーヒーに育てられている。
