夜行列車の行く先
今回は大好きな人から教えられてからずっと、聞き続けている「世界線第二ターミナル」についてゆるく書き殴っていきます。
肌を貫くように刺して 瞬く照明と 凍てつく憧憬を
風が切り裂いて回った あの時はいつか
何も言えないまま僕は 消えない残像の 切れ目を隠していく
今を行けないばかりで 沈んでしまって
行き場のない朝を迎えて 形のない意味に縋っていた
少し歩けばまだ僕の中 震える心が息を吐く
近くもない先を描いて まだ知らないさと打ち消しては
ただ夜を待つ 消せない夢を夢見ることすら叶わずに
世界線 警笛の音と吹き荒れる風 夜行列車は俄に輝いて
立ち竦む僕の前に停まりゆく 俯く目に映る
未来は ただ闇の中動き出すまま 怖くて今が心残りで
目の前の電車に乗ることも まだ躊躇ってしまう
気付かないでくれ
星が煌めくように舞って 澄み渡る夜気に 息を吸い込んで
枯葉散り敷く線路の上 独り見渡した
何も知らないまま僕は 消えない残響を 光に溶かしていく
今を行くのも影差して 罪科になって
飾り気ない夜を過ごして 取り留めない日々が傷んでいく
記憶の穴に目を凝らす度 震える心に塞がれて
遣る瀬のない今を嫌って もう知らないさと投げ出しては
ただ朝を待つ まだ明けぬ夜は少しずつ僕を映してゆく
世界線 いつか未来が見える日のため 夜行列車がドアを閉じる前に
歩き出す僕の世界 消えてゆく星空が綺麗で
『さよなら』 何処へ行くかも分からないまま 明日も僕は息をするから
乗り込んだ電車の窓 今日がただ終わってゆく
気付いているさ、僕は
大切な人は、今にも消えそうな、シャボン玉のような人でした。今も仲良くしていますが、その人からオススメされた大切な1曲です。
「大切な人に似てる、冷たく優しく暖かい歌詞、とても儚いな。」
と感じたのが第一印象でした。
想像通りの曲、というかその人がオススメしてきて違和感がないというか、それくらいその人と近い何かをこの曲から感じました。
最初は冷たく、今をどうすることも出来ない喪失感、どうしようもない苦しみと痛みを歌詞から感じました。
中盤で形も見えず不透明なのに、確かな答えが見えないのに、それでもそこにあるものに縋ってしまう迷いや願いなどを感じました。
終盤には闇の中でも、未来は進んでいく、静かに1歩を踏み出していく。そのように捉えました。
明らかに変化しているものが2つありました。
1つ目は、気持ちの変化です。
1番では夜行列車が目の前に止まるにも関わらず、俯き、それに目も当てられない。躊躇いがあります。しかし2番では歩き出し、乗り込んだ電車から窓を見つめている情景に変わる。これが大きい気持ちの変化だと思います。きっと、静かな1歩を決意と共に踏み出したのでしょう。
2つ目は「気づかないでくれ」→「気づいてるさ、僕は」に変わった部分です。
ここは大きなポイントになる歌詞だと思います。
最初の「気付かないでくれ」は不特定多数の誰かに対して僕を見ないで、弱さや臆病さを知られたくない、立ち止まり怖さで動けないこと、過去や夢に囚われていること、など自分の嫌な部分や傷を誰にも気づかれたくないと感じました。
しかし最後の「気付いてるさ、僕は」は自分自身に言葉が向いており、自分で自分の感情を認めようとしていると感じました。まだ、向き合いきれていなくても、今まで逃げてきてしまったけど、これからはしっかりと向き合っていきたいという意味を含めた強い意志を感じる歌詞だと思いました。
過去の自分は現実逃避を繰り返し、目の前のことに向き合うことも躊躇って、何事も臆病になってしまう。そんな過去を捨てたり忘れることなく、受け入れ、未来への覚悟を決める。
そんなふうに受け取りました。
静かな曲と相反した何か強いものを感じます。
この曲を聞いて思い浮かんだのは夏目漱石の作品である「銀河鉄道の夜」でした。
夜に金銀の星の海を走り抜ける鉄道、2人の青年を乗せて何処まで行くのかも分からない。
そんな中、主人公のジョバンニは銀河鉄道に乗り、親友のカンパネルラの死を精神的に乗り越える。そんなストーリーでした。
その時もやはりジョバンニには喪失感が付き纏っていたと思います。親友の死を受け入れるには幼すぎる年齢であると思うので、親友カンパネルラの居た過去に固執してしまうのではないかと考えました。
しかし、銀河鉄道を降りた後には彼が落ちた川を後にして、背を向け自分の道へ進もうとします。
少々曲と異なる部分もありますが、喪失感と希望というテーマにはそぐわないと考えました。
この曲が銀河鉄道の夜のパロディだとは思っていませんが、ふわっと考えたときに思いついたのがこの作品でした。
自分への絶望感や、喪失感、何かが空っぽになってしまうような感覚、それを乗り越えるには自分の決意が必要です。止まっても、止まっても、進まなければならない。まずは夜行列車に乗らないといけない。
彼らのように前に進まなくてはならない。強迫観念に駆られる必要はありません。立ち止まって俯いてもいいのです。自分の気持ちに折り合いをつけて、前を向く。
臆病で前に進まない自分の背中を優しく押し、未来への決意を固める手伝いをしてくれる。そんな心の支えになる1曲だと思います。
前に進むことを恐れず、心を落ち着かせて、冷静に決意を固める。夜行列車が貴方の前に停まっても、過去に囚われずに自分を受け入れ、乗車出来ることを願ってます。
