天国の握手
「死ぬのが怖い」
先に寝ていたはずの息子が、泣きそうな顔をしながらリビングにやってきて、こんなことを言ってきた。
ついさっきまでサカナクションを歌いながら裸踊りをしていたのに。
その息子が、リビングのカーペットの上で辛そうな顔で横たわっている。
「どうして急に死ぬのが怖くなったの?」
「だって、家族と離れ離れになるのが嫌だから」
えっ。
僕は、彼の不安を和らげようと、こんな言葉を投げかけた。
「お父さんとお母さんが先に天国に行って、ふたりで君が来るのを待ってるから。死んでも、決して離れ離れにはならないよ」
すると、この一言が効いたらしく、再びサカナクションの歌に合わせて踊り始めた。
踊り終えた息子は、僕の目の前に現れて握手を求めてきた。
なんだかよく分からないままその手を握り返すと、
「天国で会うの約束だからねっ!」
と言って、あっという間に階段を駆け上っていった。
「確かに、天国でまた君に会えるのだったら、死ぬのもそれほど怖くないかもね。」
息子を安心させるために放った言葉だったのに、救われていたのはむしろ僕の方だったのかもしれない。
