見出し画像

ナインクラブ テネミーの挑戦 シーズン1第6話オランダ系オーストラリア人

あらすじ

テネミー・スカイ・サークルエアは、スケートボードの世界最高峰「ストリート・リーグ・スケートボーディング(SLS)」での金メダルを目指している。しかし、その道のりには多くの難題が待ち受けていた。立ちはだかる壁を1つずつ乗り越えていく、若きライダーたちの挑戦はまだ始まったばかりだ。


登場人物

テネミー・スカイ・サークルエア

オーストラリア、メルボルン郊外に暮らす15歳の女子高校生。身長170cm、スリムなAB型。輝く金髪がトレードマーク。スケボーの腕前はオーストラリアNO.1で、オリンピックとSLSの金メダルを狙うストリート専門の美少女。
 

セイン・フォイガ・サイメニ

オランダ系オーストラリア人の15歳。身長172cm、スリムなAB型。女子高校生。前輪を弾く「ノーリー」系のトリックに抜群の安定感とキレを持つ実力派。


もくじ

  1. 出会いと長身の滑り

  2. 友情とスキルの交差

  3. 3つの攻略スタイル

  4. 日記に刻む成長

あとがき

制作クレジット

1 出会いと長身の滑り
メルボルンの突き抜けるような青空の下、テネミーはいつもの練習場でデッキを蹴っていた。 「シュウゥゥー、パチンッ!」 テールがコンクリートを弾く小気味よい音が響く。彼女が1人で集中していると、長い影がゆっくりと近づいてきた。

そこに現れたのは、セインだった。 オランダ系の血を引く彼女は、15歳にして172cmというモデルのような長身で、テネミーの170cmと並んでも一際目を引く存在だった。
セインがボードを構え、軽く加速する。 「ゴロゴロゴロ……」 ウィールが路面を噛む低い音。彼女がノーズを弾き、前輪を軸に空中でボードを回した。 「カッ! クルッ、ピタッ!」 吸い付くような完璧な着地。それは彼女が得意とする「ノーリー」系のトリックだった。
「あっ! やっぱり長身だなぁ。足が長いから、空中のモーションがすごく綺麗……」 テネミーは思わず練習の手を止め、その滑りに見惚れてしまった。 セインの滑りは、ただ派手なだけではない。1つ1つの動作が驚くほど正確で、無駄がない。
「しかも、なんて丁寧な滑りだ!」 長身のライダーは重心が高くなりやすく、荒い滑りになりがちだが、セインは違った。ボードの端から端まで神経を行き渡らせているような、慎重派のスタイルだ。
「テネミー、1人でやってたの?」 セインが静かに微笑みながら問いかける。 「セイン! 今のノーリー、すごく良かった。あなたの滑り、丁寧で本当に尊敬しちゃう」 テネミーの言葉に、セインも少し照れくさそうにボードを抱え直した。

2人の視線が、並んで置かれた2枚のボードに落ちる。 メルボルンの15歳、NO.1を目指す少女たちの「1日」が、ここから本格的に動き出そうとしていた。


2 友情とスキルの交差
2人はパークのベンチに腰を下ろし、お互いのライディングについて評価を伝えあった。 セインの滑りは、1つ1つの動作が正確で、リスクを最小限に抑えた「無難」かつクリーンなスタイルだ。その安定感には、テネミーも一目置いている。
しかし、練習が再開された直後、セインが誰も見たことのない動きを見せた。 「バチィィン!」 ノーズを強く叩く衝撃音がパークに響き渡る。セインの長身がふわりと宙に浮き、ボードが空中で複雑な回転を描いた。 「ピタッ!」 完璧な着地。



その瞬間、テネミーの指先がスッと冷たくなった。
昨日、ネットの動画で見たばかりの海外トッププロの動き。ジャッジに「低い点数」をつけさせないための、最新の対策トリックだ。それが目の前で、友の手によって再現された。 (それ、どうしたの? どこで覚えたの……?) 喉の奥まで出かかった問いかけが、苦い味に変わる。
もし今、彼女を問い詰めてしまったら? もし私の勘違いだったら? あるいは、彼女が自分を追い越そうと隠れて特訓していたのだとしたら、問い詰めることでこの大切な友情は壊れてしまうかもしれない。セインは、テネミーにとって数少ない、本当の理解者の1人なのだ。 テネミーは必死に顔の筋肉を緩め、あえてボードから視線を外して言った。 「……すごいね、セイン。いいな。今度私にも、コツを教えてよ」
心の揺れを隠すように、テネミーは自分のボードを強く踏み込んだ。 「OK! 今度は私よ!」 助走をつけ、一気にスピードを上げる。


「シュウゥゥー……バシッ!」 着地でわずかに重心が揺れ、小さなミスこそ出たものの、技の高さとスピードは圧倒的だった。


それは、ジャッジの目を釘付けにするテネミー独自の「高得点スタイル」だ。
「テネミーも、やっぱりすごい……」 セインが呟く(つぶやく)。 友情という温かい感情と、ライバルとして負けたくないという冷たい執着。 2人の少女のスキルが火花を散らしながら、パークの空気はより熱く、濃密に交差していった。


3 3つの攻略スタイル
練習の合間、2人はベンチでタブレットを広げた。画面に映し出されるのは、過去の「ストリート・リーグ・スケートボーディング(SLS)」のトップライダーたちの滑りだ。
「高得点を出すには、今の自分の滑りを客観的に分析しなきゃダメだね」 テネミーは画面を指差しながら、独自に研究した3つの攻略スタイルをセインに解説して見せた。

  1. 「フルコンプリート重視」型 これはミスを1回もしないことを最優先する、手堅いパターン。セインの今の滑りに近いけれど、確実な加点を狙うには1番の土台になる戦略。

  2. 「ハイリスク・ハイリターン」型 転倒する危険を承知で、誰も挑戦しないような巨大なハンドレールや高難度のフリップを盛り込む攻めのパターン。逆転を狙うにはこれが必要になる。

  3. 「独創性・スタイル」型 技の難易度だけじゃなく、ラインの取り方やデッキのキャッチの仕方で「自分らしさ」を表現する個性派パターン。ジャッジの印象に強く残る滑り。

「なるほど……。ただ滑るだけじゃなくて、どの戦略でいくか事前にシミュレーションしておく必要があるんだね」 セインが真剣な表情で頷く。テネミーは空を見上げて続けた。
「そう。毎年レベルが上がっているから、1秒も油断できないよ。最近は10代の若手がネットの動画を観て、信じられないスピードで新しい技をマスターしてきているから」
「ネットの動画が最高の教科書になっちゃってるんだね」とセインが言う。 世界中のライバルたちが、今この瞬間も画面の向こうで実力を付けている。 「シュウゥゥー……カッ!」 遠くで他のライダーがテールを叩く音が聞こえる。 テネミーとセインは、自分たちがどのスタイルで世界の頂点に立つべきか、それぞれの心の中で深く問い直していた。


4 日記に刻む成長
練習を終えて自宅に戻ったテネミーは、机に向かって1冊のノートを開いた。 それは、彼女がスケートボードを始めた頃から欠かさず付けている大切な日記帳だ。
今日のページには、セインとの練習内容やお互いに送りあったシビアな評価を、1つ1つ整理して書き込んでいく。 「セインのノーリー:軸が1ミリもブレていない。長身を活かしたスタイルの丁寧さは、私の大きな課題。今日の新技の衝撃を忘れないこと」
ペンを走らせる音だけが部屋に響く。 今日の練習で感じたあの焦り、セインの新技を見た瞬間の指先の冷たさ、そしてそれを乗り越えて自分のスタイルを貫こうとした瞬間の高揚感。 それらすべてが、彼女にとってかけがえのない成長の記録だった。
「10代のライバルたちは、今この瞬間も世界中で新しい技をモノにしている。でも、私も負けてはいられない」 日記には、先ほど分析した「3つの攻略スタイル」をどう組み合わせて自分だけの「勝利の方程式」を作るか、図解を交えてびっしりと記されていた。
「今日は本当に、1分1秒が濃い、充実した内容だったな」 最後にそう書き加えて、テネミーはペンを置いた。

窓の外には、メルボルンの夜空が広がっている。 今日の日記に刻んだ1行1行が、世界大会という高みへ続く階段の1段になる。 「明日は今日よりも、もっと高く、もっと遠くへ」 心地よい疲労感に包まれながら、テネミーは明日への闘志を静かに、けれど熱く燃やすのだった。
 

あとがき

今作「ナインクラブ テネミーの挑戦 シーズン1第6話」では、オランダにルーツを持つセインというキャラクターを通じ、スケートボードにおける「丁寧さ」と「大胆さ」の対比を描きました。
実在の競技である「ストリート・リーグ・スケートボーディング(SLS)」を舞台に、15歳の少女たちが抱く等身大の不安、そしてライバルでありながらも唯一無二の理解者であるという複雑な友情を感じていただければ幸いです。
ネットの動画の普及により急速に進化する現代のスケートボード界において、自分自身の「スタイル」を貫くことの難しさと尊さを、テネミーの成長と共に今後も描いていければと思います。

制作クレジット
原案・原作・画像:著作権帰属: 寄藤 淳

※この物語はフィクションであり、実在の人物・団体等とは一切関係ありません。


いいなと思ったら応援しよう!

寄藤 淳 よろしければ応援お願いします! いただいたチップはクリエイターとしての活動費に使わせていただきます!