【FF6】「カタンカタン…」静寂が涙を誘う「魔列車」とカイエンの別れ。
◾️はじめに
スーパーファミコン時代の超名作
「ファイナルファンタジーVI」(FF6)。
プレイした人なら誰もが覚えてる、
インパクト大のあのイベント
「魔列車」
について思い出を振り返ってみます。
お盆だしね。早いけど。

「魔列車」(まれっしゃ)
英名:Phantom Train
戦火や病で命を落とした人間の魂を、霊界へと送り届けるための列車。
という設定がされています。
おどろおどろしくも重々しい設定。
それでありながら、魔列車内を探索する道中はコミカルなイベントでなごませ、最後は疾走感あふれるボス戦で締めます。
そしてラストに訪れる結末は……
涙なしには語れません。
すべてのギャップが見事に調和した名ダンジョンという印象です。
そして、この「魔列車」を語るうえで外すことができないのが、BGM『魔列車』。
植松伸夫氏による作曲に加え、ゲーム上の緻密な演出。
さらに、主人公の一人・カイエンと亡き家族との別れといったシリアスなシーンにも遭遇します。
今回は、そんな魔列車イベントについて振り返りつつ思い出を語っていきたいと思います。
◾️ツッコミどころ満載!車内に散りばめられた小ネタとギャップ
迷いの森を抜けた3人の主人公…
「マッシュ」「シャドウ」「カイエン」。

「シャドウ」(暗殺者)
「カイエン」(サムライ)
この3人がうっかり乗り込んでしまった魔列車。
生者は乗ってはならないといわれる伝説の列車から脱出するため、一行は最前列にある機関室を目指して進むことになります。
緊迫したシチュエーションのはずですが、
車内はプレイヤーの予想を裏切るツッコミどころの宝庫でした。
① 食堂車の食事シーン
車内には何故か豪華な食堂車が。
テーブルにつくと幽霊ウェイターが料理を運んできてくれます。
これを食べるとHPとMPが全快。しかも無料です。
この食事シーンでは、パーティーの先頭に立っているキャラクターによってリアクションが細かく変化するのが見どころでした。
・マッシュ:「メシだ、メシだ!山ほどもってこ~い!」と豪快に平らげる
・カイエン:「こ、こんなもの食べて、大丈夫なのでござろうか…?」とビクビクしつつも結局食べる
・シャドウ:テーブルの脇に座った相棒の愛犬インターセプターに料理を分けてやり、静かに一緒に食べる

特にクールで冷徹な殺し屋という印象が強いシャドウが、愛犬に優しく飯を与えるこの場面は、隠された人間味が垣間見える非常に貴重な名シーンです。
古今東西の神話には「死者の世界の食べ物を口にすると現世に戻れなくなる」という伝承も有名なので…
「死者の料理をバクバク食べて大丈夫なのか?」
とヒヤヒヤしたのを覚えています。
もっとも、魔列車は「発車した直後でまだ現世と霊界の境目を走っていた段階」だったため、生者が食べても害がなかったのかもしれません。
② 幽霊の大群と列車の連結解除
車内を徘徊する幽霊たちに話しかけた際の反応も多種多様です。
問答無用で襲いかかってくる敵
道具を売ってくれる商人の幽霊(なぜか関西弁)
一時的にパーティーへ加わる友好的な幽霊
仲間になった幽霊は専用コマンド「とりつく」で敵を即死させられますが、自分もそのまま消滅してしまうという、変わった仕様になってました。
さらに魔列車内を進んでいくと…
「に…が…さ…ん…」
と迫り来る幽霊の大群に追われます。
後ろの車両を緊急切り離しするハラハラなイベントでした。

◾️ボス戦、自我を持つ魔列車。「ぶん投げる」マッシュ。
客車を突き進み、機関室で謎のスイッチを操作すると、運行を妨害されたことに激怒した「魔列車(機関車部分)」自体が意思を持って喋りだし、ボス戦へと突入します。

戦闘画面では、画面全体が猛スピードで高速スクロール。
疾走する巨大な蒸気機関車の真前を、マッシュたちが必死に全力疾走しながら戦うという特殊な疾走感あふれる演出が施されていました。
「魔界の汽笛」や「酸性雨」といった厄介な全体攻撃に苦戦する中、魔列車戦の最大の面白ポイントがマッシュの必殺技「メテオストライク」です。
筋肉隆々な格闘家のマッシュが、自分たちの何十倍もあろうかという鉄の塊・巨体な蒸気機関車をひょいと持ち上げ、空高く跳び上がって地面にドカンと叩きつける……。
そのあまりにもシュールで豪快な立ち回り。
「いや、持ち上がるんかい!」
「さすがキンニクだるま!」
と当時のプレイヤーたちを大爆笑させました。
そして、魔列車はアンデッドモンスターのため、
アイテム「フェニックスの尾」や「聖水」で
一撃で倒せます。(この辺りもネタ感強め)
◾️疾走感と不気味さが同居する名曲『魔列車』。
道中のコミカルさと豪快なバトル。
そこへRPGとしての深みを与えてくれるのが、
植松伸夫氏によるBGM『魔列車』と「音の仕掛け」だと思います。
この曲は、単にBGMが流れるだけではなく、ゲーム内の環境音とシームレスに融合しています。
列車が発車する「カタン…カタン…」というレールを踏みしめる効果音が徐々にテンポアップしていき、速度が一定に達したところで、悲しげなメロディがスタート。
そこから重低音を効かせた怪しい音が響き渡り、
不気味で先が見えない雰囲気へと変貌します。
「静と動」の対比が表現された楽曲です。
さらに面白いのが、
①プレイヤーがフィールド上で移動を開始するまで、イントロのレールの走行音がずっとループし続ける
②一歩脚を踏み出すと自然にメインメロディへと展開していく
といった凝ったギミックが仕込まれていました。
■「あえて音を削る」――カイエンと妻子の別れ
魔列車との激しい戦いの末、強引に停車させたマッシュたち。
列車から降り立った謎の駅のホームで、物語はそれまでのコミカルな空気感を一変させ、FF6屈指の悲しいストーリーが展開されます。
ホームの先には、戦争や毒殺によって命を奪われた大勢の人々の魂。
その魂が次々と魔列車の中へと吸い込まれるように乗り込んでいきます。
その列の中には…
ケフカの毒薬によって命を落としたカイエンの妻・ミナと、幼い息子・シュンの姿が。
「待ってくれミナ! シュン……」
去りゆく列車に向かって必死に走り出すカイエン。
「あなた……しあわせだったわ。ありがとう……」
「パパ! ぼく、がんばって剣のけいこをしてママを守るよ!!」
列車は静かに霊界へと走り去っていきます。

ドマ城が襲撃され、駆けつけた時にはすでに冷たくなっていた妻子。
看取ることすらできなかったカイエン。
残酷な現実でしたが、
「最期に直接お別れの言葉を交わし、感謝を伝えて見送ることができた」とみる事もできます。
この演出の真骨頂は、妻子との別れの瞬間、
BGMやメロディは一切流れないという事です。
画面に響いていたのは、ただ静かに規則正しく打ち鳴らされる「カタン…カタン…」というレールの走行音だけ。
あえてメロディを完全に消し去り、静寂と走音だけを空間に残す。
この演出によって、カイエンが一人ホームに取り残された圧倒的な孤独感と、胸を刺すような哀愁、どうあがいても戻らない現実感が、表現されているのです。
「そっとしておいてやれ…」
普段は冷徹な暗殺者として振る舞うシャドウが気遣う短い言葉。
そして、カイエンを追いかけようとしてホームから転落したマッシュ。
男たちの絆と人間味が、カイエンの悲劇をより一層味わい深いものにしてくれていました。
■最後に
コミカルな車内での食事や、マッシュの豪快すぎる必殺技。
綿密に計算されたBGMの「静と動」。
そしてカイエンと妻子の切ない別れ。
「FF6」の魔列車は、ユーモアやバトル、グラフィック、音楽。
そしてストーリーが完璧に噛み合った、不朽の名ダンジョンだと思います。
