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ヒロトと談志②2人のキャリアと関係性

2人のキャリアとその凄さ


今回の記事ではまず、簡単に2人の経歴を紹介すると共に、両者のキャリアの凄さの一端に触れていきたい。


甲本ヒロトは1963年、岡山県生まれ。
1985年にギタリスト真島昌利らと共にザ・ブルーハーツを結成し、「リンダリンダ」「TRAIN-TRAIN」など数々の名曲を生み出す。95年にブルーハーツ解散以降、ザ・ハイロウズを経て、現在はザ・クロマニヨンズで活動している。

2026年1月現在、甲本ヒロトは62歳、相棒の真島昌利(マーシー)は63歳だ。ブルーハーツの結成・デビューから40年が経った現在も、まったく変わらぬ熱量とロックに対する初期衝動そのままに、二人はアルバムを作りステージに立ち続けている。

そのキャリアを通じて、一貫してほぼ一年に一枚のアルバムリリースとそれに伴うツアーを愚直に行っているこの二人。多くのアーティストのアルバムリリースが数年に一度というのが当たり前の音楽業界の中で、これほどストイックな活動を続け、なおかつ人気を保ち続けているミュージシャンはあまり他にいないだろう。

ヒロトとマーシーに影響を受けたと公言するミュージシャンはあまりに多く、未だにブルーハーツは日本のロック史の中で特別な存在だ。
さらに映画・ドラマ・マンガ・小説などあらゆるジャンルでヒロトとマーシーが書いた歌詞・曲名などを引用・オマージュした作品は多く、その文化的影響は音楽のみならず多岐にわたる。


立川談志は1936年、東京・小石川の生まれ。
1952年、16歳で五代目柳家小さんに入門し、1963年、27歳で真打に昇進。1983年に落語協会を脱退し、立川流を創設し家元を名乗る。

落語家としてだけでなく、時に政治家やタレントとしても活動しながら、古典芸能の枠を飛び越える存在感を放っていた談志。
破天荒・型破りな言動や経歴の一方で、生涯を通して落語自体に対して人一倍の愛着と真摯な姿勢を持っていた。
それゆえに談志は「天才・鬼才」、「落語界の風雲児・反逆児」、「誰よりも落語と格闘した男」など、多くの形容をもって語られる。

自らが立ち上げた落語立川流からは弟子として立川志の輔・談春・志らくといった売れっ子の落語家が多数生まれ、ビートたけしや太田光、上岡龍太郎など多くの大物芸能人が口々に談志への敬愛を述べている。

また、今では「サザエさん」と並んで日曜夕方に放送される国民的長寿番組の一つであり、そして現代のテレビ番組としては珍しく落語家の出演者達によって構成されている「笑点」を企画し初代の司会を務めたのも談志だった。

2011年に75歳で亡くなったが、「談志がいなければ現在の落語界の盛り上がりも無かった」と言われるほど、その生前・死後から現在に至るまで談志が落語界に与えた影響はあまりに大きい。



以上のように、甲本ヒロトと立川談志はロックと落語というジャンルの中でそれぞれがとても大きな存在感を放っている。

しかし、この二人の経歴から分かるように、二人が歩んだキャリアのフィールドはまったく重なり合っていない。
談志の生前も両者の間には、特に直接的な深い交流があったわけでもなかった。

では、この二人の関係性とは一体どのようなものだったのだろうか。


談志のファンだったヒロトとマーシー


実は、ヒロトが談志のファンである事を公言している事はよく知られていることだ。
ヒロトは自身が受けるインタビューで談志について度々口にする事がある。

そして、2007年にNHKで制作された「立川談志 71歳の反逆児」という談志を特集したドキュメンタリー番組では、太田光や立川志の輔といった面々と共に、ヒロトがインタビューコメントで出演している。

そのインタビューコメントの中で、ヒロトは以下のように語り談志の落語を讃えているのだった。

生で(談志の落語を)見たことがない人がいると思うんですよ。
もうそれはねぇ、もったいない。
いくばくかのお金があったら見に行った方がいい。
ほんとに素晴らしいよ。

ちなみにここでは比較的インタビューを受ける機会が多く、談志について言及する事も多いヒロトをメインにして話を進めているが、相棒のマーシーも談志が好きだと度々インタビューで述べている。

そして二人が初めて行った談志の落語会は、談志がガンを患い、もう今後談志の落語を生で見られなくなるもしれないと思ったマーシーが、「絶対見ておいた方がいいから!」と言ってヒロトを誘ったそうだ。

ヒロトとマーシーはその後も何度か談志の落語会に足を運んだらしく、落語家の春風亭一之輔がパーソナリティを務めるラジオにマーシーが出演した際には、その時に談志の「芝浜」を聞いて「最後には知らない間に涙がでてた」と語っている。

そして極めつけとして、2002年に行われたタワーレコーズによる「NO MUSIC、NO LIFE」のポスター企画では、ヒロト達の希望によって談志との対談・撮影を行っている。
(以下のサイトでその時の様子がまとめられている。)
第37回 ─ THE HIGH-LOWS & TATEKAWA DANSHI - TOWER RECORDS ONLINE



無類のロック好きであるヒロトとマーシーが、バンドやミュージシャン以外の存在に対して共通してこれほどまで敬愛を述べる事は珍しい。
(ヒロト個人であれば昆虫やバイク・プロレスなど、マーシー個人であれば野球や散歩・カレーなどについての愛を語る事は多い。)

ヒロトとマーシーは、談志の語る落語に一体何を感じていたのだろうか。
次回以降の記事では、そんな談志について語ったヒロトの言葉をとりあげながら、その点をより深く掘り下げていこうと思う。

そしてそのキーワードとなるのは、
「談志は“やさしそう”じゃなくて、“やさしい”」というヒロトの言葉だ。


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