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ブルーハーツのDNAを宿すバンド5選


1985年にTHE BLUE HEARTSというバンドが結成されてから、40年以上の月日が経った。

ブルーハーツの代表曲は、「リンダリンダ」「TRAIN-TRAIN」「人にやさしく」「終わらない歌」「青空」「情熱の薔薇」「夢」など、挙げればキリがない名曲ばかりだ。

そしてそんな名曲揃いのブルーハーツの楽曲は、バンドの解散から30年以上が経った今でもまったくその輝きを失っておらず、昔と変わらず年齢を問わず多くの人の心を打ち、現在でもブルーハーツのファンは生まれ続けている。

さらに、そのブルーハーツの楽曲を書いていた甲本ヒロトと真島昌利(マーシー)はブルーハーツの解散以降も、THE HIGH-LOWSを経て現在はザ・クロマニヨンズで、60代となった今もまったく変わらぬ姿勢でバンド活動を継続して行っている。

しかも、ヒロトとマーシーはバンドの解散以降はそのブルーハーツの名曲群を一切歌うことはなく、常に過去ではなく“現在のバンド”であることを貫き続けてきた。

世界中に数多いるロックバンドの中でも、ここまで過去の経歴や名曲を一切顧みず、ただただひたすらにロックンロールを鳴らすことだけを愚直に行ってきたバンドやミュージシャンはいないのではないかと思うほどだ。

そんなブルーハーツはまさに、日本のロック史の中で「伝説のバンド」という言葉が似合う存在だと思う。
(そしてヒロトとマーシーはきっとそんな形容を嫌がるだろう。)

そして、そんなブルーハーツやヒロトとマーシーから影響を受けたバンドやミュージシャンは数知れない。

今回は、そんな数多のブルーハーツから影響を受けたバンドの中からあえて5バンドを選んで、そのバンドとブルーハーツについてのエピソードを紹介していこうと思う。




Ken Yokoyama


言わずと知れた日本のレジェンドパンクバンドHi-STANDARDのギタリスト横山健。

ハイスタについてはもはや説明不要の存在だが、ブルーハーツと同じように、独自の形で日本のパンクに革命を起こしたバンドだ。
今回はあえて横山のソロバンドであるKen Yokoyamaを挙げることにする。

横山は自身の経歴を振り返るインタビューの中で、「ブルーハーツで自分の中の世界観がガラッと変わった。自分がやりたいのはこういう音楽だったって」と、ブルーハーツに出会った時の衝撃を語っている。

もしもブルーハーツがいなければ、ハイスタもいなかったかもしれないという世界線を想像することはとても胸アツだが、実際もしも両バンドがいなければ現在の日本のロックシーンもまったく違う景色になっていただろう。

横山は自身を特集したムック本や雑誌「GiGS」でマーシーと対談しており、またヒロトともスカパーの番組内で対談している。

また近年は北陸エリアで行われる対バンイベント「乱シリーズ」においてクロマニヨンズとKen Yokoyamaともう一組の3バンドという形式で、定期的に対バンを行う間柄だ。

そんな横山は2016年に自身のブログで、クロマニヨンズのライブを見た時の感想を以下のように綴っている。

あの人達は「兄貴」なんだ。いっくら自分が力をつけて大きくなったつもりでも、強くなったつもりでも、全然敵わない。
自分が「行けた」と思うその分、先を行ってしまう。しばらく会わないと、ある面で自分が「越えられたんじゃないか?」って気がしてくる。ところが会うと全然、なんにも越えられてない。
そしてそれがまた妙に嬉しく、清々しかったりするのだ。 
(中略) 

クロマニヨンズは、やっぱり「クソー、かっけえ!敵わねえなぁ!でもいつか越してぇなぁ!」って思わせてくれる。いつまでもカッコいい兄貴でい続けてくれる。
どんなに間が空いても、決して「無」にさせてくれない。そしたらたぶん、一生越せない。それでいいんだと思う。

横山健の別に危なくないコラム Vol.95




Dragon Ash


日本のミクスチャーロックの旗手であるDragon Ash、そのボーカルのKj(降谷建志)もブルーハーツからの影響とリスペクトを公言して憚らない一人だ。

Kjはインタビューでは音楽を始めるきっかけとなった1曲として決まってブルーハーツの「情熱の薔薇」を挙げており、また「学生時代にはほぼすべてのブルハの曲をカバーしていた」とも語っている。

さらに近年のインタビューでも、「音楽とかロックとか、バンドとか作詞とかすべて、今の自分を作っている一番根底にある初期衝動がブルーハーツ」とまで語っており、いかにブルーハーツの存在がKjにとって一貫して大きなものなのかがよく分かる。

そしてミクスチャーロックを掲げるDAには、ブルーハーツのようにシンプルなパンクサウンドを鳴らす曲もあるが、多くの曲でラップをするKjが何よりも強く影響を受けているのは、まさにその力強い言葉による歌詞なのかもしれない。

2003年にヒロトとKjが雑誌「Bridge」で対談した際にも、Kjは「自分になくて相手にあるもの、羨ましいと思うところはどこか」というアンケートの質問に「言葉」と答えている。

そんなKjにとってロックの原風景であるブルーハーツの歌詞やメッセージは、DAの楽曲にも地続きで繋がっていると言えるだろう。

そしてドラゴンアッシュとKj自身も、そんなブルーハーツ直系の歌詞を携えた楽曲をもって、日本の音楽シーンに革命を起こした存在だ。

DAの楽曲の中では「陽はまたのぼりくりかえす」や「ROCK BAND」といったアンセム曲で、かなり直接的にブルーハーツを意識した歌詞が盛り込まれている。


DAとKjの歌詞については他の記事でも取り上げておりますので、よろしければお読みください。




銀杏BOYZ


2000年代初頭に「青春パンク」「ブルーハーツチルドレン」と呼ばれるようなバンドが多く生まれブームのようになっていた中で、その筆頭のような存在だったGOING STEADYと、その後継バンドである銀杏BOYZ

GOING STEADYではまさにブルーハーツの影響を強く感じるストレートな日本語詞による少年性や青春性の強いパンクサウンドを鳴らしていたが、銀杏BOYZではさらにその直情的なサウンドと歌詞を加速させていった。

現在の銀杏BOYZはボーカル峯田のソロプロジェクトのような形になっているが、若者の衝動や恋心や鬱憤を歌い上げたエバーグリーンなその楽曲群は、ブルーハーツの楽曲と同様にまったくその輝きを失っていない。

そして峯田は、雑誌「音楽と人」で2006年と2020年の2度に渡ってヒロトと対談しており、ブルーハーツとヒロトに対する熱い思いが抑えられない峯田と、その様子を面白がるヒロトがとても印象的な対談になっている。

対談の中でのヒロトの峯田に対する「よく分かるよ、君のことは(笑)」という言葉が象徴するように、お互いの深い部分でシンパシーを感じ合っている2人なのだと思う。

当初やはりここは名曲「BABY BABY」を貼ろうと思っていたが、公式動画にMVがなかったのでこちらの曲を載せることにした。
「ドブネズミみたいに美しくなりたい」という「リンダリンダ」の歌詞を思い起こさせるような、激しく純粋な熱情が込められているMVだ。


ちなみに、MVの3:53〜辺りで、もみくちゃにされながら最前列にいてアップになる男性は、なんと現在のお笑いコンビの空気階段の鈴木もぐらだそうで、昔から銀杏BOYZの大ファンだったそうだ。
空気階段はヒロトが好きなお笑いコンビでもあり、お互いにファンのような関係で、ラジオなどでも対談している。




サンボマスター


「世界はそれを愛と呼ぶんだぜ」や「できっこないをやらなくちゃ」といった熱いメッセージの歌詞を情熱的に歌い上げ、多くの人の背中を押すようなそのサウンドから、現在では老若男女に愛されるバンドとなっているサンボマスター

多くの人の気持ちを鼓舞し奮い立たせるその歌詞とサウンドは、ブルーハーツの「人にやさしく」の精神性を、最も強く直接的に鳴らしているバンドと言えるかもしれない。

また、クロマニヨンズのステージはヒロトの「オーライ、ロッケンロール!」という一言でライブが始まるのが定番となっているが、ボーカルの山口もライブ中に度々「ロックンロール!!」と激しく連呼している。

そんなサンボマスターは、近年とてもヒロトとマーシーと繋がりの深い活動をしている。

2025年にサンボが出演したフジロックのステージでは、なんとヒロトとマーシーがサプライズ出演し、The Clashの「White Riot」を共に演奏したことが大きな話題となった。

また、2024年にヒロトが35年ぶり出演したラジオ「オールナイトニッポン」では、ヒロトの指名で山口が番組内のパートナーを務めたのだった。
そしてその2024年末にはクロマニヨンズとサンボマスターの初の対バンも行われた。

2021年にはウェブ「ナタリー」でヒロトと山口は対談しており、このような共演の度に山口はブルーハーツやヒロト達に対する熱い思いを口にしている。

今までのヒロトとマーシーにはこういったコラボのような活動が少ないように思うが、このようなサンボとの共演時の言動を見ると、2人のサンボマスターに対する深い信頼と共感が伺える。




ハルカミライ


もしかしたら今の日本のロックバンドの中で、最もブルーハーツのDNAを色濃く受け継いでいるのがハルカミライではないだろうかと思う。

今の日本のパンクシーンの主流であるハイスタやエルレのような英詞メロコアスタイルのサウンドではなく、日本語詞によるパワフルなパンクサウンドを圧倒的なステージパフォーマンスで鳴らすその姿は、まさにブルーハーツ直系の影響を感じる存在だ。
近年はフェスでトリを務めることも増え、今最も勢いのあるバンドの一つだろう。

ボーカル橋本のインタビューによれば、若い頃はそれほどブルーハーツを聴いていなかったが、ある時期からブルーハーツやSTANCE PUNKSを聴くようになり、ハルカミライの音楽性やライブのやり方もガラッと変わっていったそうだ。

そんなハルカミライの「アストロビスタ」という曲の中では、「眠れない夜に私ブルーハーツを聴くのさ 独り占めできるドキドキがあるんだ」という歌詞が出てくる。

また、「ファイト!!」という短めの疾走パンク曲もあり、その曲で歌われる「あいつのことなら俺が ぶっ飛ばしといてやるから 気にしてるんなよ」という歌詞は、同じくブルーハーツの疾走パンク曲「ダンスナンバー」を強く彷彿とさせる。

さらに、ここに載せた「夏のまほろ」という曲には、夏についての名曲を書くことが多いマーシーの直系の影響を感じたりもする。
ちなみに、マーシーはかつてハイロウズ時代のライブのパンフレットに以下のような名言を残している。

ロックンロールは夏に似ている
夏の熱気の中に言葉を失うほどの寒さがある
ロックンロールは永遠に終わらない夏だ




この他にもブルーハーツの強い影響を受けたバンドにはMONGOL800や、先ほど話が出たSTANCE PUNKSなどがいるし、最近の人気バンドであるSUPER BEAVERにもブルーハーツのスピリッツを深く感じられる。

また近年、独自のバンド活動を続け注目を集めるGEZANの「Absolutely Imagination」という楽曲でも、ブルーハーツを強く意識した歌詞が織り込まれている。

さらに、ブルーハーツは日本のロックやパンクのみならず、THA BLUE HERBといったヒップホップ勢にも大きな影響を与えているのだった。

ここまで挙げたバンド・ミュージシャンでさえ、その他多くの影響を与えた数から考えればごく一部だと思うと、その影響を受けたミュージシャンの数はまさに枚挙にいとまがない。

先ほども書いたことだが、もしもブルーハーツがいなければ、こんなにも素晴らしい日本のロックバンドやミュージシャン達もいなかったか、決して今と同じような形になっていなかったことを考えると、ブルーハーツが日本の音楽シーンに与えた影響は本当に計り知れないと思わざるをえない。



ヒロトの心のコピーと、マーシーの投げキッス


Youtubeの対談動画の中で、ヒロトは自身のやっている音楽について以下のように説明している。

僕がやっていることはコピーなんです。

でもそれは歌詞をコピーすることでもなくて、メロディをコピーすることでもなくて、心です。

エレキギターを「オレはこうやってやるぜ!」とか、「こんな風に歌ってやるぜ!」、ジョーストラマーが「White Riot! I wanna Riot!」ってあんな風になってた時の心
(をコピーしている)

ゴッホがこの絵の具をこの色を、この力の強さでこの角度で、こうやって置いたときのあの心。
「こうやってやるぜ!」ってテンション。それをコピーするんです。

ハンターch

これまでヒロトが書いてきた数々の名曲も、ヒロトにとってはそれまでヒロト自身が聴いて感動してきたロックの名曲の「心のコピー」だと考えると、とても感慨深いものがある。

そしてまさにそういう意味では、ここまで挙げてきたバンド達も、ブルーハーツの曲を聴いて感動と衝撃を受けたその心をコピーし、自分自身のやり方と曲でその心を表現してきたと言えるだろう。

ヒロトは歌詞などで「感動の波紋」という言葉を使うことがあるが、これまで紹介してきたものはすべて、そんなロックンロールの感動の波紋が広がった結果生まれてきたバンドや名曲なのかもしれない。



また、コロナ禍の影響もまだ残る2022年に一度だけ、「STAY ROCK」というロックフェスが開催された。

その時の出演バンドは、クロマニヨンズ、Ken Yokoyama、銀杏BOYZ、ハルカミライというまさにここまで挙げたメンツで、そのブルハの心をコピーしたバンドによる、まるでブルーハーツトリビュートとでも呼べるようなフェスだった。
(そしてなんと先ほど話に出た空気階段によるコントのお笑いライブも、各バンドのライブの間に行われた。)

そのフェスのトリはもちろんクロマニヨンズが務め、いつものように最高のライブを披露したが、僕がとりわけ印象深かったのは、すべての曲をやり終えて最後にメンバーがはけていく時の出来事だ。

最後にステージに残っていたマーシーが自分の着ているそのフェスのオフィシャルTシャツと、そこに書かれていた「STAY ROCK」というロゴと共に、出演バンド達の名前をおもむろにオーディエンスに見せつけた後に、大きく投げキッスのジェスチャーをしたのだった。

あまり多くを言葉では語らないマーシーによる、ロックンロールと出演バンド達に対する最大の愛情表現であり、粋な演出だったように思う。






そしてもしも、そんなヒロトとマーシーに、「ここまで挙げたようなバンド達をどう思いますか?」と問いかけたとしたら、2人は同時にこう答えるかもしれない。







「ロックンロール最高!」




せっかくなので、最後は本家本元のブルーハーツの動画を載せます。

ブルーハーツやクロマニヨンズ、そしてここまで挙げたすべてのバンドやミュージシャンの「感動の波紋」がここから始まっていると思うと、とても感慨深いですね。



やっぱり、ブルーハーツとロックンロール最高!




最後に、僕は他の記事で「ヒロトと談志 やさしさと肯定がつなぐロックと落語」という連載を書いています。

このブルーハーツについての記事のように、ヒロトの語った言葉を取り上げながら、ヒロトにとってパンクとは何かといったことや、ヒロトが「ロックをやっていなかったら弟子になりたい」とまで語った落語家の立川談志について掘り下げて書いています。

きっと今まで気づかなかったブルーハーツやロックについての視点があると思いますので、もしこの記事を良いと思っていただけましたら、そちらの連載記事もお読みいただければ幸いです。

そんな今後の連載記事ではブルーハーツの歌詞について、独自の視点で掘り下げて書いていくつもりです。


ここまで、お読みいただき本当にありがとうございました。

※文中すべて敬称略です。

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