20年を経て変わった私と、変わらなかった私の話
20年ぶりに帰ってきた『プラダを着た悪魔2』。 映画館の暗闇でスクリーンを見つめながら、私はふと、 「20年前の自分は、この映画をどう観ていたんだろう」 と思い返してみた。
若い頃に観た前作は、 「自分の人生を、自分の足で歩きたい」という気持ちはなくただただ眩しくて、 “仕事ってこうやって頑張るものなんだ”と背中を押してくれる存在でした。
あれから20年。 私は母になり、働き方も、生き方も、優先順位も変わった。 守りたいものが増え、手放したものも増え、 自分の時間はいつも誰かと分け合いながら生きている。
「誰かのために動いた日」は、いつか自分に返ってくる
アンディが『Runway』を救おうと奔走する姿を見て、 私はこれまでの仕事で「誰かのために動いた瞬間」を思い出しました。
あのとき、 誰のためでもなく、ただ“今の自分にできること”をやり遂げようとした日々があった。 不器用でも、遠回りでも、精一杯を積み重ねてきた自分がいた。 その小さな積み重ねが、今の私を支えている。
それらはすぐに結果にならなくても、 人生のどこかで、自分を助けてくれる瞬間がある。
そして母になった今、私が積み重ねてきた誠実さは、 いつか子どもたちの世界につながっていくと。
ナイジェルがアンディを陰で支えていたように、 誠実さは巡り巡って、次の世代にも届いていく。
母として働く私たちが選んできた“誠実な選択”は、 子どもたちが大人になったとき、 「こうやって生きていいんだ」と思える指針になる。
私たちが今日、誰かに向けた優しさや、 静かに積み重ねた努力は、 子どもたちの未来のどこかで、 そっと灯りになる。
感情に蓋をしないことは、人としての強さでもある
アンディとエミリーの和解のシーン。 あれは、働く女性だけでなく、一人の社会人としても深く刺さる場面でした。
仕事をしていると、 “強くいなきゃ” “感情を表に出してはいけない” そんなプレッシャーを自分にかけてしまうことがある。
でも、 素直に気持ちを伝えることは、弱さではなく、関係を育てる力だと気づかされる。
立場が違っても、価値観が違っても、 「本当はこう感じている」と誠実に伝え合える人でありたい。
働く大人の人間関係は、 限られた時間とエネルギーの中で築くからこそ、 誠実さが何より大切になる。
見えない努力は、子どもが一番よく見ている
ナイジェルが20年越しに表舞台に立つシーン。 私はそこで、胸の奥が熱くなりました。
華やかな世界の裏で、 誰にも気づかれない場所で、 自分の美学を守り続けてきた人が報われる瞬間。
働く母の努力も、ほとんどが“見えない努力”です。
子どもが寝たあとに仕事を片づけた夜
朝の5時に起きて自分の時間をつくった日
誰にも言わずに飲み込んだ悔しさ
仕事と家庭の板挟みで泣きたくなった瞬間
でも、 見えない努力は、見えないところで必ず誰かが見ている。
そしてその“誰か”は、案外、子どもだったりする。
母が一生懸命働く姿は、 言葉以上に強いメッセージになると信じている。
「大切なもの」を知っていることは、どんな場所でも迷わない
映画の中で、登場人物たちは何かを手放し、何かを選び取っていきます。
アンディが 「自分自身がアイコン」 だと気づくシーンは、働く人にとって大きなメッセージでした。
肩書きでも、スキルでもなく、 自分の中にある価値観や美学こそが、働く意欲の源泉になる。
社会人として生きていると、 「誰かのために働く」 「期待に応えるために働く」 そんな理由が前に出ることも多いけれど、 本当はそれだけでは足りない。
“私はどう生きたいのか” その軸を持っている人は、どんな環境でも自分の足で立てる。
そしてこの価値観は、 一度決めたら終わりではなく、 経験や出会った人、社会の変化によって、 何度でも揺れ、何度でも更新されていくものだと思う。
だからこそ、 どの世代でも、どんな立場でも、 自分の価値観と向き合い続けることが必要なのだと感じた。
最後に
仕事に迷った日も、 子育てに追われて自分を後回しにした日も、 誰かの期待に応えられなかった夜も、
全部抱えたまま、それでも前に進んできた自分を、 少しだけ誇りに思わせてくれる。
『プラダを着た悪魔2』は、 働く母の心にそっと手を添えて、 「大丈夫、あなたはあなたのままで進んでいい」 と囁いてくれるような映画でした。
GWが過ぎれば、また日常が戻ってくる。 忙しさも、迷いも、選択の連続も、きっと変わらない。
それでも私は、 母として、そして一家の大黒柱として、 子どもたちに“背中で魅せられる存在”でありたい。
完璧じゃなくていい。 揺れながらでもいい。
そして何より、 自分の人生にワクワクしている大人の姿を、子どもたちに見せていきたい。
挑戦することを恐れず、 好きなことに夢中になり、 自分の価値観を大切にしながら進んでいきたい。
