[書評] 僕のヒーローアカデミア
みなさん、こんにちは。Naseka です。
私は 哲学者・書評家・エッセイスト として、
自らを定義しています。
「ダイバーシティ」とか
「多様性」とかいう言葉を
耳にする機会が増えたのは、
はたして いつ頃からだっただろうか。
少なくとも私が学生だった頃には、
日本においては さほど声高には
叫ばれていなかったような気がする。
今や性自認も 性格も ライフスタイルも
(例を挙げたらキリがないが)
「みんな違って当たり前」という風潮も
ひと頃よりは浸透しつつあるかもしれない。
(社会の制度的には まだまだ不十分だが)
そんな中で今回紹介する作品は、
“個性” という言葉が
あらゆる場面で用いられている。
これほどまでに “個性” という語が
登場する作品は、マンガのみならず
広く各分野を見渡しても
そうないのではなかろうか。
干支が4周目にも入ると、
今回の作品のように
「THE 少年マンガ」
とでも言うかのようなバトルもの には
あまり興味を示さなくなった。
事実 興味を持って読み始めたのは
最終巻発売の一歩手前だったのだが、
いざ読んでみると
非常に「面白い」作品だった。
やはり少年には能力バトルもの…?
ヒロアカ(作品の通称)は、
俗にいうところの
「能力バトルもの」。
週刊少年ジャンプ連載だったし、
王道といえば王道路線の部類だろう。
だいたい その手のマンガは
やれ 馬鹿力だ 炎が出せるだ
高速移動ができるだとか、
様々な特殊能力を持った
キャラクターが
多数登場しては戦いを繰り広げる。
正直そういう表し方をすると
該当する作品は
古今東西 山ほどあるわけで。
あとは舞台が
ファンタジックなのか SF的なのかとか、
どんな武器を持って
(或いは持たずに)戦うかとか、
誰が死ぬだとか 死なないだとか、
恋愛要素があるか ないかとか、
ある程度マトリクス的に並べていけば
似通った作品はあるものだと思う。
もちろんマンガだから
デザインとかレイアウトとか、
アニメになったら声優がどうとか、
差別化される要素があることは
重々承知をしている。
私も 20代の中盤くらいまでは
それなりに楽しんで
読んでいたクチだから、
そこに魅力を感じる気持ちは
とてもよく分かる。
子どもでも分かる “個性” の違い
古今全ての能力バトルものを
網羅しているわけじゃないから
大きなことは言えないが、
私が読んできたマンガの中においては
ヒロアカも 設定的には
特別 真新しいものは感じなかった。
強いて言えば、その特殊能力を敢えて
“個性” という言葉で
表現したことくらいだろうか。
(あとは “個性” があって
当たり前という世界観くらいか)
あとは既にどこかで見たことのある
要素の取捨選択の組み合わせだと思う。
ただ
「だから、ありきたりで
つまらない作品だった」
となるようなら そもそも斯様に
書評を書くこともないわけで
(誰かに頼まれたわけでもないし)、
たしかな面白さが そこにあった。
この作品で用いられる “個性” は、
私たちが日常 口にする「個性」とは
だいぶ意味合いが違う。
「あの人って個性的だよね」
といったところで、
その人が火を噴いたり
瞬間移動したりすることは
マジシャンや大道芸人でもない限りは
まずないだろう。
ところが ヒロアカでいうところの
“個性” は違う。
それこそ馬鹿力を発揮できたり、
爆炎や氷を操ったり、
何かをすり抜けたり 変身できたり、
私たちの日常の感覚では
「個性的なんてもんじゃない」レベル。
キャラクターも
(”個性” は ひとまず置いといて)
人間が多いが、
とはいえ”異形” と呼ばれる
人ならざる姿の人物たちも存在する。
「それも “個性” のうち」
という世界なのだ。
そんな世界で ”個性” を
善行に用いる者と
悪用する者が存在し、
悪用する者と戦うのが主人公たち
…という構図である。
概念的に捉えると
能力バトルものとして
しっちゃかめっちゃかに
戦いを繰り広げたり、
少年マンガとして日常パート
(主人公たちは ヒーローになるための
学校に通う生徒という設定)
があったりと、
少年マンガとして相応に面白い。
私は まだ観ていないが
アニメや映画にもなっているし、
動きや音がついたなら
いっそう躍動感もあって楽しいだろう。
もちろん私も、
そういう意味での面白さは
十分に感じられた。
だが、私が特に「面白い」と感じたのは
もう少し概念的な点だった。
生まれ持った “個性” は、
ひとりひとり 残酷なまでに異なる。
“個性” によっては
鍛えて伸ばすこともできるが、
どれだけ努力しようとも
超えられない壁はあるし、
中には上位(下位)互換とも
言えるような “個性” もある。
また “個性” を
善悪どのように用いるかは、
結局のところ 当人自身の倫理観による。
また一見 癖の強そうな
“個性” であっても、
その活用法を工夫することで
皆が予想だにせぬ活躍を
することもできる。
ここまでヒロアカの世界に則って
「”個性”」と記してきたが、
ここまで述べたことは
我々が日々用いている
「個性」に置き換えても
全く遜色がないことに
気付いただろうか。
「頭がいい」とか
「身体能力が優れている」
といった個性も、
そのまま そっくり当てはまる。
生まれつきの差は大きいし、
努力で伸ばすこともできるが
超えられない壁も存在する。
その長所を
世のため人のために活かすか
悪事を働くかは、
当人の倫理観次第だ。
また現代では
不適切なものの見方だが、
歴史を遡ってみれば
外見の違いが
「異形」「人ならざる者」
と扱われた時代もあった。
超常的な能力と
アメコミ的な演出ばかりに
目が行きがちな作品ではあるが、
こうして考えてみると
実に現実社会を映した作品と思える。
改めて多様性を考える
多様性の尊重が強調される時代に、
このような作品が生まれた。
同じく週刊少年ジャンプ連載の
「鬼滅の刃」を読んだ時も感じたが、
その時代を映したような作品が
大ヒットするというのは、
単にマンガ的な面白さだけではない
理由があるように思う。
これからの時代を生きる上で、
多様性について考えることは
避けては通れないだろう。
(社会の中で生きようとするならば)
そのためには価値観の
アップデートは必須だし、
学ぶ手段もセミナーや書籍など
選択肢がある。
もちろんどれを選ぼうが
個人の自由ではあるのだが、
堅苦しい話や本が苦手という人には
このヒロアカを読んでみることを
薦めてみたい。
私は最初から多様性を念頭に
読んだわけではないが、
事前に「多様性」や「個性」について
考えるという意識を持って読めば、
きっと単にマンガを読むのとは
違った気付きを得られることだろう。
こんな人にオススメ!
・能力バトルものが好きな人
・個性や多様性について考えたい人
こんな人には合わないかも…
・能力バトルものが好きではない人
・多様性を認めたくない人
お読みいただき、
ありがとうございました。
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