[書評] トヨタの危機管理 -どんな時代でも「黒字化」できる底力-
コロナ禍は世界中がパニックになった。
自身やご家族を亡くなられたり、
後遺症に苦しめられたりした方も
多いことだろう。
あの病理が遺したものは大きかった。
それらの悲しみや辛さがあったことを
理解した前提で 敢えて言わせてもらうが、
ある意味で私は
あの期間の仕事が楽しかった。
平和ボケした周囲の管理職や経営陣が
狼狽えるのを尻目に、
こういう非常事態こそがリーダーの
手腕の見せどころだろうと 私は燃えた。
立場的には管理職に次ぐ
No.2 というポジションではあるが、
当のリーダーにも
遠慮なく意見をぶつけて
私は最前線に入り戦った。
反省すべき点は いくつもあっただろう。
だが それでも彼らの指示を
待っていたよりは、
きっと的確に対応できたはずである。
それは私が彼らとは異なり、
日頃から非常時を意識して
仕事をしていたからだ。
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平時のリーダーは誰でもいい
私は普段、工場でエンジニアをしている。
平たく言えば、ものづくりをするための
機械設備のメンテナンスなどを
行っているわけだ。
いつものように出勤したある日、
工場長が従業員を集めた朝礼で
こんなことを言っていた。
「今は利益が少ないので、いっそう
原価低減を図っていきましょう」
けだし迷言である。
原価低減などは平時から
取り組んでいることであるから、
事実上 何も言っていないのと同じなのだ。
(或いは平時にやるべきことを
やっていないと
言っているようなものである)
危機に陥ってから対処しようと考える、
典型的な平和ボケ思考。
だからこそ、私とはウマが合わずに
何度となくやり合うことになったのだが。
(彼の方が年齢も役職も上ではある)
平時であれば、決められたことを
淡々とこなす優秀な会社員なのだろう。
もし彼がお役所にでも勤めていたら、
なかなかの高評価だったろうと思われる。
こういう思考の下でコロナ禍のような
危機が起きてしまうのは、
当人にとっても組織にとっても不幸である。
平時というのは
予め決められたルールの中で
いつもどおりに
仕事をすればいいだけだから、
リーダーなんて言ってしまえば
誰だって務まる。
それこそ現代であれば、
"いつも" のデータを食わせれば
AI にだって任せられそうだ。
問題となるのは、その "いつも" から
大きく外れた状況下に
置かれた場合である。
危機管理思考が組織を鍛える
そこをいくと世界のトヨタは
余分な在庫は極力持たず、
一般的な製造業の感覚からすれば
かなりギリギリの状況で
操業していると言っても
過言ではなさそうである。
(現地で見たことはないが)
そんなギリギリの日常の中では
ひとたび大地震やコロナ禍のような
大規模災害はおろか、
サプライチェーンの
ちょっとしたトラブルなどでも
平和ボケしているような組織なら
たちまち操業停止に陥ってしまう。
逆説的に言えば
そんな軟弱な組織ではないからこそ
切り詰めた状況で効率を高めた操業が
可能なのであろうが、とにかく
それだけ平時から危機に備えて
いざというときに
どのように判断すべきか
しっかりと考えられているのだ。
だが そのトヨタも、最初から
危機に強い組織ではなかったという。
長い歴史の中で幾度となく訪れた
大小様々な危機を必死に乗り越え、
そこから徹底的に学び
カイゼンを重ねていくことで
今の強さを身につけてきたのだった。
少年ジャンプのマンガを
読んでいても感じたことがあるが、
日頃から熾烈な競争や
強い緊張感の下で
仕事をしている人物は強い。
もちろん その働き方に
合う合わないはあるし、
万人ができることではない。
だが、だからこそ
周囲の追随を許さない圧倒的な
パフォーマンスを発揮できるのだろう。
強者から学べ
正直 私は斜に構えた人間だし、
この本の全てを鵜呑みにする気はない。
別にトヨタを礼賛しようとも思わない。
トヨタ(というより自動車業界?)は
下請けに めちゃくちゃ厳しいみたいな
声も聞くし、これだけの大企業だから
アンチの数は多いし声も大きい。
(無論それらの声も
鵜呑みにする気はないが)
阪神大震災時の
金型のエピソードなんかは、
人命第一の視点から見れば
いくらトヨタのやることとはいえ
手放しで称賛はしがたい。
ただ、ここに書いてあることが
実際とは乖離した
キレイゴトだったとしても、
その主義主張は理に適っていると思う。
どんな者からでも
学ぶべきものはあるというのが
私の信念でもあって、
少なからず日本のものづくりを
最先端で牽引してきた存在として
トヨタから見習うべき点が
大きいのは否めない。
業種・業態や企業規模など、
トヨタとは比較にならない環境で
働く人が圧倒的に多いのは事実である。
だが この本にあるのは危機管理に対する
"考え方"や"マインドセット"であるから、
どんな組織においても
通ずるものがあるはずだ。
自然災害と同様、危機は
いつ・どんなかたちで
訪れるか分からない。
だからこそ、余裕のある平時からの
思考の積み重ねが大切なのだ。
トヨタでいうところの
"危機管理" ではなく
"リスク管理" の考え方である。
より一般的な表現に替えるなら、
"0次の備え" や "フェイズフリー" の
思考法を学べる1冊と言えるだろう。
こんな人にオススメ!
・経営者やリーダーの立場にいる人
・危機に対する対応力を高めたい人
・「危機のことは起こってから考えればいい」と
思っている人
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お読みいただき、
ありがとうございました。
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目の前のレンガ積みにしか視点が向かなければ、終わりが見えない単純労働。やりがいなんて、感じられるはずもない。でも それが "建物を作っている" のだと分かれば、やりがいも手応えも俄然 変わってくる。今やっていることが、いったい何につながるのか。それを理解することが継続のコツだ。
— Naseka@令和の哲学者 (@philosopher_018) July 5, 2025
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