電気主任技術者の憂鬱
みなさん、こんにちは。Naseka です。
私は 哲学者・書評家・エッセイスト として、
自らを定義しています。
10月は のっけから体調を崩して
寝込んでしまった。
「健全な精神は健全な肉体に宿る」とは
よく言ったもので
(どうやら出展元からは
意味が変わっているらしいが)、
肉体が健全でないときは
精神も本調子ではなくなるらしい。
取り立てて この10月に
アンニュイになる要素が
あったわけではないのだが、
総合的に見て 精神的な安定性を
欠いている印象がある。
本業の会社員としての私には
10月には毎年恒例の
一大イベントがあるのだが、
このイベントを経験するのも
あと3、4回といったところか。
なぜなら不惑を前にして、
そろそろ今の勤め先にも見切りをつけて
新たな道を歩んでいこうと
考えているからである。
今回はそんな話。
電気主任技術者としての仕事
しばしば話のネタにすることもあったが、
私の仕事は生産工場における
設備管理(生産技術)の技術者である。
中でも「電気主任技術者」という
資格と立場を預かる都合上、
毎年10月には工場全体の
電気を止めて(=停電させて)
電気設備の年次点検を行っている。
今年も世間が3連休で浮かれる中で、
それ絡みの休日出勤がある。
普段 工場の電気が
トラブルでストップしたら、
生産設備が停止するどころか
下手をすると事務方も含めた
工場全体の業務に支障をきたしかねない。
日頃 みんなに感謝されることは
まずないのだけれども、
いざ「なにか」があれば
鬼のように責められるに違いない。
自分が当事者になって
初めて分かったことだけれど、
インフラ従事者というものは
なんと報われない仕事なのだろう。
もちろん「縁の下の力持ち」という
格好良さはあるし、
私もなんとなく そういうのを好む
美意識の持ち主ではあるのだけれども
(野球なら目立つピッチャーよりも
目立たないキャッチャーの方が好きだ)、
「目立たない」のと
「理解をされない」ことの差は
思いの外 大きい。
何も「崇め奉り給え」と
宣うつもりはないけれども、
なくてはならないインフラを
日々守っている人たちに対して、
その恩恵を享受する側の人たちは
もう少し感謝の念を抱いても
罰は当たらないと思う。
やれ電車が数分遅れただの
電気が1、2時間止まっただの、
これだけ社会の広範囲に
敷設されたシステムで、
たったそれくらいの規模の
トラブルで抑えられているのだ。
形あるものはいつか壊れるのが
世の定めなのに、
それでいちいち烈火の如く
クレームを頂戴していたのでは、
やっている方の身が持たぬ。
電気主任技術者の世間の需要
そんな私も従事している
「電気主任技術者」、
今に始まったことではないが
全国的に需要が不足している。
とりわけ私の持っている
「第二種電気主任技術者」
という括りになると、
その資格の取得難易度と
法的に求められる設備の規模から、
一般に「電験三種」と呼ばれる
「第三種電気主任技術者」よりも
有資格者が少なく取り合いが激しくなる。
設備の維持運用には法令で必須と
定められていることから、
「資格者が確保できません」という
言い訳は企業側には通用せず、
意地でも何らかの手段で
有資格者を持ってこなければならない。
もちろん自社の従業員で
賄うことができれば
話は早い(私もそうだ)が、
それができなければ
「お金」で解決するほかない。
要は「派遣」というやつである。
この手の派遣を扱っている企業が
どれくらいあるかは分からないのだが、
私が見聞きする範囲では
ひと月に7桁の費用は下らないとか。
転職サイトにまわってくる求人や
知人の話を聞いても、
「月100万出すから、ぜひ弊社に!」
という話はゴロゴロある。
ということは、実際の相場は
それよりも高いのであろう。
自分で言うのもなんだが、
電気主任技術者といえども
365日忙しいわけではない
(勤め先にも拠るだろうが)。
電気設備に係る
法的な責任が重くのしかかる
(慣れないとそれなりに神経は磨り減る)
とはいえ、ひとつの事業場で
毎月100万円を支払うほどの
労力は必要でないと思っている。
規模が大きければ外注業者の
手を借りることも多いだろうから、
「設備の規模が大きい=自分の負担が大きい」
というわけでもない。
自分でやっているから言うが、
取得してしまえば
食いっぱぐれないどころか
非常にコスパのいい資格だと思っている。
(第二種以上を試験で取得するには、
相応の学力が要求されるが)
一方の私は
さて そんな第二種電気主任技術者だが、
私の場合は残念ながら
そこまでの待遇は受けていない。
月に100万円どころか、
その10分の1にも遥かに満たない手当が
申し訳程度につくだけである。
もちろんそれは「手当」であって
他の従業員と同様の月給は
いただいているのだが、
その分 工場の従業員としての
(電気主任技術者以外としての)
仕事もたっぷりやっている。
かたや派遣で
「電気主任技術者の業務『だけ』」
のために月100万円以上
払っている企業がある中で
(…というか私の勤め先の他県の事業所も
まさにそうしているのだが)、
私は「片手間に」
その仕事をやっているのである。
高額な「専業」を雇っている
事業所の人間曰く、
「なんであんなに仕事をしていない人に
会社は月に100万も払っているんだ!?」
とのこと。
それはそうだろう。
私だって
「電気主任技術者の仕事だけ」
をしろと言われたら、
相当に暇を持て余すと思う。
でも「派遣」社員だから、
契約以外の仕事はさせられないんだな。
そもそも そんな契約でしか
人を確保できないのが問題なのだが。
義理を果たしたらサヨウナラ
じゃあ なぜそんな扱いの差を
甘んじて受けているかと言えば、
これはひとえに
「個人的に義理を果たしたいから」
の一心である。
これだけ需要(とコスパ)の高い資格だが、
私の場合は勤め先での「実務経験」を
評価されての取得である。
残念ながら 大学で専攻してきたとはいえ、
不真面目な学生だった私には
試験で資格を取得するだけの頭はない
(「第三種…」は試験で取得したが)。
私も(ギリギリとはいえ)
昭和生まれの世代のせいもあってか、
「取るものを取ったからサヨウナラ」と
ドライに割り切れないところがある。
特に実務に当たっては尊敬する前任者に
知識と共にその心構えも薫陶を受けたから、
「この人の守ってきたものを私が引き継ぐ」
という意識が強かった。
今の年齢で資格と経験を武器に転職すれば
年収アップも簡単にできる
(巷が羨む 年収一千万円もなんのその)
のに現職に固執してきたのは、
会社はもちろん その前任者への
義理を果たしたいだけだったのだ。
単に金を稼ぐだけなら、
こんな非効率なことは
とっくの昔に辞めている。
だが 今の会社の技術者への理解のなさには、
さすがにそろそろ愛想が尽きてきた。
「自動化」の旗印の下で
知識や技術を持たぬ者には優しく、
技術者にはそうではない。
入社早々に代わりが務まる仕事は
プライベートな時間も保証され
手当も弾む一方で、
中途採用の経験者ですら
簡単に替えが利かない技術者は
夜間休日関係なく仕事に駆り出され
プライベートも何もあったものではない
(それでいて手当もない)。
最近、思うことが増えてきた。
今 抱えている大きな仕事が片付いたら、
もうそろそろ会社への義理も
果たしたと言っていい頃だろう。
私以外に有資格者はいないから、
おそらく他の事業所同様に
高い対価を払って派遣で賄うのだろう。
今と比べて毎月100万円以上
コストは嵩むから利益も減るし、
あれもこれも担っている人間が減るから、
残された人たちは
ボーナスが減って苦労だけが増える
格好になるだろう。
今いっしょに働いている彼らには
非常に申し訳ないが、
私にも私の人生がある。
彼らに気を遣って
自分の人生を犠牲にできるほど
私は彼らを愛していないし、
人間もできていない。
家族と自分の人生に比べれば、
そんなものは いくらでも切り捨てられる。
なんだか湿っぽい話になってしまったが、
決して後ろ向きに考えているわけじゃない。
むしろ私は至って前向きだ。
別に会社に恨みがあって
転職をするというわけではない。
私には私のやりたいことがある。
そしてそれは、今の環境では
できないというだけの話である。
「手に職をつけていると強い」
とはよく言うが、
これだけ需要が高い職が手についていると
チャレンジするのはだいぶ楽になる。
「最悪失敗しても、
資格を生かせば食うには困らぬ」
と考えられれば、
思い切った選択もできるというもの。
ここ数年
「自分はどう生きていきたいのか」
と悩んでいたが、
私はどうやら文章を書くことが
好きなようなので
「物書き」という生き方を
してみたいようである。
今の仕事の責任をしっかりと果たしきり、
人生の後半戦を前に
思い切った舵を切りたい。
そんな前向きな気持ちで、
私は今日も文章と向き合うのだ。
お読みいただき、ありがとうございました。
☀この記事はクロサキナオさんの企画参加記事です☀
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https://note.com/kurosakina0/n/n182ddaae17b9
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