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[書評] 失敗の科学

私はMである。
…とだけ言うと誤解を招きそうだが、
自分の至らない部分や間違いを
指摘されると嬉しいと思う性質である。

もちろん罵声や怒号が
セットになっていれば
相応にショックを受けるが、
指摘の内容そのものに関しては
ありがたく頂戴することにしている。
なぜならそれは、自分が
ひとつ賢くなるための材料となるからだ。

ところが周囲を見渡してみると、
必ずしも同じように考えている人は
多くはなさそうだ。

腹の中は読めないものの、
表面的には失敗を指摘されると
断固として拒否(認めない)の
姿勢を取る人もよく目にする。

正直 私は この本を読むまで、
失敗から学ぼうとしない人間は
愚かだと思っていた。
自ら成長の機会を放棄する
向上心のない愚か者だと。

だが、この本を読んで
それが私の偏見だったのだと知った。

失敗から学ぶことが大事なのは確かだ。
だが、それを避けてしまうのは
決して その人個人の問題では
なかったのである。

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失敗に対する意識付け

そもそも私自身、成人したころまでは
「失敗=避けるべきこと」
だと考える人間だった。

それは "失敗しないようにする" 
という意味でもあり、
"失敗から目を背ける" 
という意味でもある。

失敗するくらいなら挑戦自体を
避けるように選択してきたし、
いざ失敗をしたときは
なるべく早く忘れるように努めた。
まぁ引きずる性格なので、
そうは言っても
なかなか忘れられなかったが。

おかげで年齢の割に だいぶ経験値を
積み損ねてきたから、
周囲の同級生や友人と比べると
何事にも後れを取っていたように思う。

私なりに どうして
こんな性格になったのかを
考えてみたのだが、思い当たるのは
幼少時より父親に仕込まれた
減点主義の影響である。

100点満点のテストで
99点を取ったとする。
たとえクラスで一番の成績であっても、
99点については褒められずに
取り損ねた1点についての叱責が
私に向けられるのが常だった。

たしかに完璧を目指すうえでは
正しい視点なのかもしれないが、
小学校に入りたての少年にとっては
その真意は理解するに至らなかった。

少年にインプットされたのは、
「間違う=怒られる=悪いこと」
という思考。

これが故に
能力が伴わないにもかかわらず
完璧主義になってしまうという、
随分と生きづらい人間が
出来上がってしまった。

自分語りが過ぎてしまったが、
失敗に敏感な人も
多かれ少なかれ 似たような経験が
あったのではないかと思っていた。

すなわち「失敗=悪」という
刷り込みがあったと。

人間は失敗に対して愚かだった

だが この本を読んでみると、
必ずしも そうではないようにも思えた。

たしかに何か問題が起きると
感情的に責め立てたり
犯人捜しを始めたりと、
失敗を悪いことと刷り込まれる経験は
確かに少なくないだろう。

しかし さらに一段深く
掘り下げてみると、
失敗に直面した時に
そうして感情的に
反応してしまうこと自体が
実は人間の本能なのだと
考えさせられた。

たとえば 本書で解説されている
認知的不協和。
よく自分のミスや失敗を
「私は間違ってない」と断固として
認めない人を見かけたことがあるだろう。

私は「なんと往生際の悪いヤツ」としか
感じたことはなかったが、
そもそもこういう場合 人間は
必ずしも嘘をついているのではなく、
本気でそう思い込んで
しまっていることも多いらしい。

たとえ本人以外には
違って見えていても、
本人にだけは そう見えてしまう。

コギト・エルゴ・スム
(我思う、故に我あり)にも
通ずる話である。

それは個人の賢愚の問題ではなく、
もはやヒトという生き物自体に
帰属する問題なのだ。

そもそも人間本来の性質として、
失敗に対しては愚かであるように
設計されているのかもしれない。

人類の歴史は 失敗の歴史

今や(少なくとも私にとっては)
失敗を認めて
そこから学ぶということは
当たり前の価値観であるが、
少なくとも歴史を振り返ると
世界全体が
そうではなかった時代があった。

"「批判」は「友情」よりも尊い"

これは終章の小見出しのひとつである。
まさしく私も同意見だ。
確証バイアスかもしれないが、
少なくとも今の私は全面的に賛同する。

私はこれまで いくつか失敗学に関する
書籍を読んできたから、ひとつひとつの
知見については既知のものもあった。

だが、失敗についての
知見もさることながら
ストーリー展開が面白い1冊である。
単純にひとつの読み物としても
十分に面白い。

あとは、この本を
「自分事として読めるか」だ。
単に面白い読み物とするのか、
自分を磨くための座右の書とするのか、
それは あなたの向き合い方によって
変わるだろう。

こんな人にオススメ!
・失敗学について学びたい人
・失敗から学び、
 成長できるようになりたい人
・失敗から学ばない人の理由や
 考えを知りたい人

こんな人には合わないかも…
・誰に何と言われようが
 失敗には向き合いたくない人

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お読みいただき、
ありがとうございました。


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