くすりとの距離感が、ゆっくりと変わり始めた
くすりは、持病のある方にとって日々を支える知恵であり、ときには大きな助けにもなってくれます。
でも最近、ふと“思い出した”のです。
くすりというものは、いつか卒業するもの——。
病気を患う前は、それが当たり前の感覚でした。
けれど、自分がくすりの力を借りるようになって、いつの間にか「これは一生のお付き合いなんだ」と心のどこかで思い込んでいたのだと思います。
脳脊髄液減少症と、くすりとの距離感
私は脳脊髄液減少症(漏出症)を発症して15年。今も定期的なMRIでの経過観察を続けています。
ただ、この病気には治療薬として効くくすりはなく、わたしもほぼ服薬していません。
主治医は、運動・睡眠・水分摂取といった「生活そのものの調整」をとても大切にしてくれています。
一部の漢方薬だけ、体調が大きく揺らいだときのために処方して頂いていますが、毎日続けるものではありません。
もちろん、発症当初には対症療法として、いくつかの薬を処方されたこともあります。
“効きすぎる薬”が教えてくれたこと
その中でも、強く印象に残っているのが睡眠導入剤です。
15年前、初めてブラッドパッチを受けて退院したあと、なかなか眠れない日が続きました。
当時の病院で相談すると、
「髄液を作るには睡眠が大事。薬を使ってでも眠った方が良い」
とのことで、睡眠導入剤を処方されました。
——効きました。驚くほどに。
“気絶するように”、あるいは“闇の中に落ちるように”眠ってしまい、朝は起きるのがやっと。
昼間も思考が働かず、ブレインフォグのような状態になりました。
怖くなって服用をやめました。
(医師からも「自分で判断していい」と言われていたので…)
この経験から、この睡眠導入剤については
「お守りとして持つけれど、必要なときにだけ使う」
というスタンスが身につきました。
※くすりの効き方には個人差があります。私と同じ状態が、誰にでも起こるわけではありません。あくまでわたしには合わなかったということです。
呼吸器内科での“思いがけない一言”
脳脊髄液減少症とは別に、わたしは気管支喘息も患っています。
ここ数年は、日常的にステロイド吸入を続けてきました。
状態が落ち着いてきた頃にコロナ禍に突入し、感染した際の重症化リスクも鑑みて、吸入を「やめる」「減らす」という選択肢は消えていました。
多くの方が同じような状況だったのではないでしょうか。
そのため、くすりとの距離感が少しおかしくなっていたかもしれません。
そんななか、2025年10月の呼吸器内科の診察で、主治医がふとこう言いました。
「落ち着いているので、吸入薬を減らす方向で検討していきましょう」
「いずれは手放せるように」
今の先生は、最初に診断してくださった医師とは別の方です。
以前の先生からは「ステロイド吸入は一生続けるもの」と聞いていたので、私は“手放せないもの”と思っていました。
そのことを伝えると、先生はやさしい声で言いました。
「急にやめるわけではありません。それは危険ですから。
でも、発作が落ち着いている今なら、“中止を検討”しても良いと思います。
段階的に進めていきましょう」
断定ではなく、余白のある提案でした。
——そんな選択肢があったんだ、と目が覚めるような思いでした。
手放すことを怖がっていたのは、私自身
先生は続けて、こんな言葉も添えてくれました。
「減薬は不安かもしれません。でも慎重に進めますし、何かあればすぐ来てください。対応できますから」
その瞬間、気づきました。
手放すことを誰よりも怖がっていたのは、私自身だったと。
極論を言いたいわけではなくて
もちろん私は、
「薬を飲み続けるのはよくない」
「自分の治癒力だけで治せる」
といった極端なことを言いたいわけではありません。
断薬が危険な薬があることも知っていますし、毎日の薬を絶やす事の出来ない病気の方がおられることも理解しています。
ただ——わたしのように
本当は手放せる可能性があるのに、その選択肢に気づけていない人がいるかもしれない。
そして、誤解を恐れずに言えば、
“減薬を提案し、慎重に経過を見る”という余白を持てる医療者は、決して多くはないのかもしれない。
責任や事情もあるので、良い悪いという話ではありません。
だからこそ、
自分の身体について、人任せにしすぎずに考えてみること。
相談して、選択肢を拓いていくこと。
その大切さを、今回あらためて実感しました。
※患者の“減らしたい” "やめたい" という感覚と医師の専門的判断が一致するとは限りません。勝手に服薬を辞めていいはずはなく、それをおススメするような意図はありません。
自分の治癒力に、もう一度やさしく触れてみる
最近はプレ更年期の体調不良も重なり「服薬でどうにかならないかな…」と思うことも増えていました。
でも、くすりに任せきりにするのではなく、
自分の治癒力を信じて行動していくことも、大切な要素なのだと感じています。
吸入薬の減薬の道のりは、まだ始まったばかり。
どうなるかは分かりません。
それでも、選択肢がひとつ拓けたことで、視野が少しだけ広がった——
そんな出来事でした。
最後まで読んでくださり、ありがとうございました。
