Z900RSという、歴史の席を買うバイク 〜Z900RS/カワサキ〜
Z900RSという、歴史の席を買うバイク〜Z900RS/カワサキ〜
バイクに詳しくない普通の人のバイクのイメージといえば、ハーレーかカブだろう。
その次に出てくるのがZ1Z2、あるいはCB-fourだと私は思う。この3台は名が通ってるので何がそんなに偉かったなんてのは、正直私が今更語るほどでもないと思う。
一応簡単に言っておくと、世界初の並列4気筒の750ccがCB750 Four(K0)で、世界初の"ツインカム"並列4気筒がZ1だ。Z2は北米向けだったZ1の国内版だ。

そしてZ1はこれまで2回オマージュされている。初回が1993年登場のゼファー。

中型クラスでネイキッドブームを起こしたりしたのだが、ゼファーの登場理由は当時ですらZ1がプレミア価格に高騰していたからだ。そして2回目が今回のZ900RSだ。

ここで一つ、はっきりさせておきたいことがある。
Z900RSは、Z1の代わりではない。
そして、Z1の再来でもない。
「Z1という記号」を、現代のルールの中で使える形にしたバイクだと思う。
実際、Z900RSは普通に速いし、普通に重いし、普通に高性能だ。
でも、このバイクを選んでいる人たちの多くは、最速だから選んでいるようには見えない。
むしろ、「Z」という名前や「あの形」や「あの雰囲気」
を身にまといたくて選んでいる。
つまりこれは、
乗るためのバイクというより、
“Zに乗っているという立場”を引き受けるためのバイクに近い。
面白いのは、このバイクが、
• ヒエラルキーの頂点を取りに行く性能ではない
• でも「大型に乗っている」という看板はちゃんと掲げられる
という、非常に安全な位置にいることだ。

速すぎない。
尖りすぎない。
でも「Z900RSです」と言えば、だいたいの場面はそれで終わる。
これは、
「大型版のSR400」
みたいなポジションだと思う。
速さを競う道具ではなく、
文化の記号を穏やかに身につけるための道具。
排気量マウントの道具として見たとき、Z900RSは正直、あまり役に立たない。
2026年のZ900RS SEのメーカー希望小売価格は 1,837,000円。
排気量は948ccだ。
一方で、50ccほど排気量が大きいホンダのCB1000Rは、メーカー希望小売価格が1,670,900円。
値段は安くて、排気量は上。
あるいは、もう少し足してヤマハのMT-10(1,925,000円)という選択肢もある。
少なくとも、
「排気量」「性能」「価格」という物差しで見たとき、
Z900RSは一番お得な場所にはいない。
むしろ、意図的に“効率の悪い場所”に置かれているバイクと言った方が近い。
もし「強さ」や「スペック」を買いたいなら、
Z900RSは最初から候補に挙がらないはずだ。
それでもZ900RSが売れているのは、
このバイクが「強いから」でも「速いから」でもないからだと思う。
このバイクが売っているのは、
性能ではなく、「Zに乗っている」という立場
のほうだ。
排気量マウントにも使いにくい。
最速マウントにも使えない。
コスパ自慢にも向かない。
でも、
「Z900RSに乗っています」
と言えば、それでだいたい話は終わる。

これは、
戦うための大型バイクではなく、
立場を引き受けるための大型バイク
なんだと思う。
結局のところ、Z900RSというバイクは、
Z1/Z2やゼファーの系譜に、
「自分もそこにいる」という事実を買うバイク
なんだと思う。
速さでもない。
新しさでもない。
コストパフォーマンスでもない。
このバイクで買っているのは、
カワサキの「Z」という物語の並びに、
自分の一台を置ける、という位置
その権利だ。
だから、排気量や価格の話をし始めると、どうしても割に合わない。
でも、それでも選ばれているのは、そもそも物差しが違うからだ。
これは「バイクを道具として選ぶ人」には、たぶん最後まで理解されないタイプの買い物。
私はそう思う。
出典:川崎重工業.バイクブロス様
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